
「Demon Hunters」は、台湾とインドが初めて合作したという触れ込みの映画である。インド人俳優が出演しているが、監督は台湾人なので、台湾映画としていいだろう。中国語の題名は「叫我驅魔男神(私を悪魔払い神と呼んで)」。台湾では2025年12月31日に公開され、インドでは2026年5月15日からAmazon Prime VideoとJioHotstarで配信された。ヒンディー語吹替もあったが質が悪かったため、中国語版を英語字幕を頼りに鑑賞した。
監督は陳玫君(Chen Mei-Juin)。主演は林哲熹(JC Lin)とアルジャン・バージワー。アルジャンは、主演を張れるスターではないが、「Son of Sardaar」(2012年)や「Kabir Singh」(2019年)などのヒット作に脇役出演しており、インドで一定の知名度を誇る俳優である。
他に、雷嘉汭(Regina Lei)、高捷(Jack Kao)、張懷秋(Harry Chang)、江譚佳彥(Chongtham Jayanta Meetei)などが出演している。江譚佳彥は日本人ぽい名前だが、インド出身、台湾在住の俳優のようである。マニプリー人なのではないかと思われる。
トミー(林哲熹)はオカルト系インフルエンサーで、相棒のアルミ(雷嘉汭)と共に悪魔払いのライブ配信をしてフォロワーを獲得しようとしていた。あるとき彼らは廃屋でミイラを発見する。トミーの血を吸ったミイラが彼に襲い掛かるが、たまたま居合わせたインド人霊媒師バーバージー(江譚佳彥)とその孫サンジャイ(アルジャン・バージワー)に救われる。その廃屋では、瘋吉(張懷秋)が悪魔に魂を捧げ、切断された左手の指を復活させてもらっていた。瘋吉の叔父でマフィアのドン、鐵雄(高捷)は、甥の異変を感じ取り、トミーに会いに行く。そこにはバーバージーとサンジャイも来ていた。バーバージーは30年前にトミーの祖父と共に悪魔と戦ったことがあった。その悪魔が瘋吉に憑依して復活し、世界征服をしようとしていたのだった。
バーバージーは、悪魔を退治するためにはトミーとサンジャイに秘められた力を引き出す必要があると考え、彼らを訓練する。だが、トミーは幼少時に祖父から悪魔払いの厳しい修行を受けたためにアレルギーになっていた。サンジャイも、両手に「ブラフマーの目」が目覚め始めていたが、まだ全く未熟だった。
バーバージーは、悪気を検知するコンパスを使い、瘋吉の居場所を突き止める。瘋吉は鐵雄の部下たちをゾンビ化して衛兵にしていた。バーバージーは、トミーやサンジャイなどがゾンビたちと戦っている間、瘋吉に戦いを挑む。激闘の末に二人は差し違え、命を落とす。サンジャイはバーバージーを火葬し、鐵雄は瘋吉の葬儀を行った。真剣に修行をせずにバーバージーに加勢できなかったトミーをアルミは責め、彼と絶好する。サンジャイは、バーバージーの遺物がトミーの家にあると知り、アルミと共にそれを引き取りに行く。だが、まだ瘋吉に取りついた悪魔は完全に死んでいなかった。悪魔は死んだ鶏に取りつき、サンジャイとアルミを襲う。サンジャイは左腕を悪魔に乗っ取られる。駆けつけたトミーに教えられた印相を使って何とか左腕の動きを押さえ込んだ。鐵雄も、棺桶の中から瘋吉の遺体が消えていることに気付く。
瘋吉の復活を感じ取ったトミー、サンジャイ、アルミ、鐵雄は、とりあえずトミーの祖父の隠れ家に身を隠す。そこでトミーとサンジャイは中途半端に終わってしまった修行を完遂しようとする。しかし、瘋吉に送り込まれたゾンビたちにアルミが誘拐されてしまう。トミー、サンジャイ、鐵雄は悪魔払いの準備を整え、瘋吉の待ち構える廃墟へ突入する。アルミはゾンビ化してトミーに襲い掛かるが、彼は彼女を殺さずに正気に返す。サンジャイは瘋吉と戦い、後でトミーも加勢して、二人は死闘の末に悪魔を倒す。
台湾映画の現状を全く知らないのだが、台湾でもこんなチープなB級映画が作られているのだと分かり、何だか妙に安心してしまった。初の台印合作映画という点を除けば、アピールに困る作品だ。かつて日本でも「ボンベイtoナゴヤ」(1993年)などの「日印合作」を謳った、頭を抱えたくなるような失敗作が作られたことがあったが、「Demon Hunters」を観てついあの時代を思い出してしまった。思い付いたようにダンスが入るのもそっくりだ。さも踊りを入れておけさえすればインド映画風になるとでもいいたげである。とんでもない偏見だ。アルジャン・バージワーのキャリアにとってもとんだ汚点になってしまった。確かに彼はインドの映画界で伸び悩んでいたため、このような国際プロジェクトが舞い込んで有頂天になって飛びついてしまったのだろう。早まったことをしたものだ。
ヒンドゥー教と道教を融合させてみたら面白いのではないかというアイデアがこの映画の着想源になっていたと思われる。インド神話において最強の女神とされるカーリー女神が登場し、物語の下敷きになっている。カーリー女神はまるで悪魔のような外見をしており、物見遊山の外国人が興味を引かれるのもよく分かる。そういう王道を安易に突き進んでしまうところにも、どうしようもないチープさを感じてしまう。
悪魔を倒す条件として提示されていたのは、聖人の遺灰と、勇者の血と、何千人もの祈りの3つである。トミーとサンジャイは死んだバーバージーの遺灰を飲み、トミーは血によって三叉戟や銃弾をパワーアップした。そして何千人もの祈りというのは、SNSのライブ配信を通じて集められた。まるで「ドラゴンボール」の元気玉のようで、実際にセリフの中でそう表現されていた。その上にサンジャイの手に現れた「ブラフマーの目」が炎を生み出しており、武器として有効に機能した。サンジャイは亡霊を見ることができる特殊能力も持ち合わせていた。こういう映画にこういう特殊能力などの設定はありがちなのだが、これらがあまり論理的に説明されず、整頓されずに出て来るため、付いていくことが困難で、世界観の構築に失敗している。そもそも悪役である悪魔についてもほとんど説明されていない。悪魔だからとにかく悪い奴ということになっている。この映画は一体、小学生の落書きか何かであろうか。
台湾映画と香港映画を混同してはいけないが、何となくアクションシーンでは台湾人キャラはカンフーで戦うようなイメージがあった。だが、誰もカンフーでは戦っていなかった。代わりにサンジャイが「ムドラー」と呼ばれる印相を作って力を呼び覚ましたりするが、これはいわゆる「臨兵闘者皆陣列在前」の九字護身法であり、道教由来だ。また、なぜか一瞬だけキョンシーが現れ、瞑想するサンジャイに襲い掛かろうとする場面もあった。とにかくいろんな要素がごちゃ混ぜになっている。
中国語版では基本的なセリフは当然のことながら中国語なのだが、国際プロジェクトということもあって、英語やヒンディー語のセリフも意外に多く使われていた。特にバーバージーはヒンディー語と中国語を使いこなし、台湾人とインド人の橋渡し役になっていた。
「Demon Hunters」は、初の台印合作映画ということだが、小学生が考えたような幼稚な設定の物語であり、大人の鑑賞に耐えうるレベルの作品ではない。怖い物見たさでのぞいてみたくなるかもしれないが、自制することをおすすめする。
