
2026年2月6日公開の「Bhabiji Ghar Par Hain! Fun on the Run」は、人気TVコメディードラマ「Bhabiji Ghar Par Hain!」(2015-25年)の映画版である。いい意味でチープなコメディー映画であり、かつて権勢を誇ったボージプリー語映画の残滓をそこはかとなく感じる。題名の前半は、「兄嫁は在宅中です!」という意味である。
監督はTV版と同じシャシャーンク・バーリー。基本的にはTVドラマ監督で、映画の監督は本作が初のはずである。メインキャストもTV版と同じアースィフ・シェーク、ローヒターシュヴ・ガウル、シュバーンギー・アトレー、ヴィディシャー・シュリーヴァースタヴァ。この四人に加え、映画版ではボージプリー語映画界のスーパースター、ラヴィ・キシャンとマノージ・ティワーリーが重要な役で起用されている。また、ディネーシュ・ラール・ヤーダヴ、ブリジェーンドラ・カラー、アヌープ・ウパーディヤーイ、ヨーゲーシュ・トリパーティー、サーナンド・ヴァルマーなどが出演している。
ヴィブーティ・ナーラーヤン・ミシュラー(アースィフ・シェーク)とマンモーハン・ティワーリー(ローヒターシュヴ・ガウル)はカーンプルの住宅街の隣家同士だった。ヴィブーティはマンモーハンの妻アングーリー(シュバーンギー・アトレー)に横恋慕しており、マンモーハンはヴィブーティの妻アニター(ヴィディシャー・シュリーヴァースタヴァ)にぞっこんだった。
あるときヴィブーティは、ティーカーとティッルーからタクシーを借り、アングーリーを連れ出してウッタラーカンド州の寺院を参拝しに出掛ける。彼らは途中で寄った食堂で、シャーンティ・シャルマー(ラヴィ・キシャン)とクラーンティ・シャルマー(ムケーシュ・ティワーリー)というゴロツキ兄弟に因縁を付けられる。シャーンティはハゲを気にしており、植毛手術を終えたばかりだったが、アングーリーに一目惚れし、彼女を口説こうとする。そのためヴィブーティとケンカになるが、そのときシャーンティの頭に焼けた炭が乗ってしまい、せっかく植毛した毛が焼け焦げてしまって円形脱毛症のようになる。ヴィブーティとアングーリーは逃げ出し、怒ったシャーンティとクラーンティはヴィブーティを血眼になって追った。
ヴィブーティとアングーリーは逃亡に成功するものの、ヴィブーティは尻に銃弾を受けてしまう。アングーリーはYouTubeを見ながら手術をする。一方、夫が銃で撃たれたことを聞きつけたアニターはマンモーハンにスクーターを運転させ、彼を助けに向かう。途中で二人はシャーンティとクラーンティに出会う。そして、クラーンティはアニターに恋をしてしまう。マンモーハンとアニターはヴィブーティとアングーリーと合流するが、シャーンティとクラーンティに捕まってしまい、彼らの叔父マスタージー(ブリジェーンドラ・カラー)の家に連れて行かれる。マスタージーはアングーリーの叔父でもあったが、マスタージーはシャーンティとクラーンティを止めることはできなかった。シャーンティとクラーンティは、ヴィブーティとマンモーハンを殺して、アングーリーとアニターと結婚しようとする。
アングーリーとアニターはヴィブーティとマンモーハンと共に脱出を試みるが、シャーンティに見つかってしまう。そこでアングーリーとアニターはシャーンティとクラーンティを仲違いさせようとするがうまくいかなかった。とうとうアングーリーとアニターはシャーンティとクラーンティと結婚させられそうになるが、シャーンティは直前で心変わりを起こし、彼らを解放する。
ところで、ヴィブーティがティーカーとティッルーから借りたタクシーは、酪農マフィア一家が「ブアージー(叔母さん)」と呼んで大事にする自動車だった。シャーンティとクラーンティが去った後、今度はマフィアのバッチョー(ディネーシュ・ラール・ヤーダヴ)がブアージーを追ってきて彼らを捕まえる。ブアージーはアングーリーが乱暴な運転をしたためボロボロになっていた。バッチョーの父親(ムシュターク・カーン)はブアージーの状態を見てショック死する。それを見たバッチョーは彼らを殺そうとするが、父親の魂がアングーリーやアニターに乗り移って混乱を巻き起こす。最後には、バッチョーの撃った弾を駆けつけたシャーンティが受けて彼らを救う。乱入した警察官ハップー・スィン(ヨーゲーシュ・トリパーティー)の行動によってバッチョーの父親は突然息を吹き返し、バッチョーの怒りも収まる。
日本語にも「隣の芝生は青い」という慣用句があるが、映画「Bhabiji Ghar Par Hain! Fun on the Run」は、隣家の奥さんに横恋慕する性欲旺盛な中年男性たちが主人公の、下ネタ満載の下品なコメディー映画である。どちらかといえばミシュラー家の方が都市出身のモダンなインド人を代表しており、ティワーリー家の方が農村出身の伝統的なインド人を代表している。さらに、ティワーリー家のマンモーハンは常に腹にガスを抱え、肝心なところで一発をかまし周囲の鼻をねじれさせ、その妻のアングーリーは極度の天然ボケで、うろ覚えの英単語を間違った使い方で使い周囲を混乱させるという個性付けがなされている。
コント劇をつなぎ合わせて一本の映画にしたような作りであり、映画が始まった瞬間から安っぽ全開である。ただ、セリフの応酬が面白く、映像の安っぽさに目をつむることができれば、俳優たちのやり取りに笑っている内に苦痛なく時間が過ぎていく。映画としての完成度は低いが、コメディー映画としての目的は達成している。
物語の発端は、隣家に住む主人公ヴィブーティとマンモーハンが、お互いの妻にほれてしまい、自分の妻がいながら何とか口説こうとすることだ。ヴィブーティはマンモーハンの妻アングーリーの田舎者っぽい純真さが気に入り、マンモーハンはヴィブーティの妻アニターの都会人っぽいモダンさが気に入ったのだろう。無い物ねだりをするのは人間の悲しい性だ。だが、もちろんその邪な考えと行いが彼らにトラブルをもたらす。
ヴィブーティとマンモーハンが直面するトラブルは大きく分けて2つあった。ひとつはシャーンティとクラーンティのゴロツキ兄弟だ。シャーンティはアングーリーに恋してしまい、クラーンティはアニターに恋してしまった。これも他人の妻への横恋慕であることに注目したい。紆余曲折の後にヴィブーティ、マンモーハン、アニター、アングーリーの四人はシャーンティとクラーンティに捕まってしまい、アニターとアングーリーは無理やり結婚させられそうになる。だが、シャーンティが突然心変わりし、自ら彼らの解放する。この心変わりは唐突すぎて、悪い意味での安っぽさにつながっていた。
シャーンティとクラーンティのトラブルが去った後に現れるのはバッチョーだ。ヴィブーティがアングーリーを乗せて連れ出した自動車「ブアージー」は、バッチョー一家の所有物だった。バッチョーはブアージーが心配になり、GPSトラッカーを頼りに追いかけてくる。そしてブアージーがボロボロになっているのを見て怒り、彼らを捕まえる。バッチョーの父親がショック死し、その魂がアングーリーやアニターに憑依したことで、今度はホラー映画調になるのだが、あくまでコメディー映画の中のホラーシーンであり、笑いが基本になっている。バッチョーの父親が生き返ったことでバッチョーによるトラブルも解決し、最終的にはなぜか、どこからともなく助けに来たシャーンティが英雄に祭り上げられてハッピーエンドで終わっている。
とにかくラヴィ・キシャン演じるシャーンティの行動が挙動不審であった。ラヴィはボージプリー語映画のスーパースターであり、彼の出演は映画版「Bhabiji Ghar Par Hain!」の最大の売りでもあっただろうが、彼にかっこいい役を用意しようとしたことで全体のバランスが崩れ、このようになってしまったのではないかと予想される。
「Bhabiji Ghar Par Hain! Fun on the Run」は、全盛期のボージプリー語映画の雰囲気を残したチープなコメディー映画だ。セリフの応酬が絶妙で、笑えるのは主に登場人物同士のやり取りであった。だが、ストーリーは全く整っておらず、映画としての全体的な完成度は低い。チープなコメディー映画をチープなコメディー映画として楽しめる人向けの作品である。
