現在のヒンディー語映画界はまだアイシュワリヤー・ラーイの天下であるように見える。カリーナー・カプール、ビパーシャー・バス、ディーヤー・ミルザーなど、魅力的な新人女優が次々に登場したものの、アイシュワリヤーの絶対的な美しさと人気に適う力量を持った女優はまだ今のところいないように思える。もっとも、アイシュワリヤーの2002年は、「Devdas」で存在感を示すことができたものの、それ以外目立った活躍をすることができなかった。2003年の彼女は「Dil Ka Rishta」でスタートを切った。2003年1月17日から封切られ、評判はまあまあ。今日チャーナキャー・シネマに観に行った。
「Dil Ka Rishta(心の絆)」のキャストは、ラーキー、アイシュワリヤー・ラーイ、アルジュン・ラームパール、プリヤーンシュ・チャタルジー、イーシャー・コッピカル、パレーシュ・ラーワル。監督はナレーシュ・マロートラー。
ジャイ(アルジュン・ラームパール)は大富豪の御曹司。南アフリカのケープタウンに住んでいたが、亡き母親の誕生日にムンバイーへ駆けつけた。そこで父親(パレーシュ・ラーワル)、親友のアニター(イーシャー・コッピカル)と再会した。ジャイはたまたま立ち寄った聾学校で美しい女性ティア(アイシュワリヤー・ラーイ)と出会い、恋に落ちる。ジャイはティアに愛の告白をするが、彼女には既にラージ(プリヤーンシュ)というボーイフレンドがいた。 それでも諦めの付かないジャイはティアにアプローチを続ける。だが、ティアはしつこいジャイを嫌う。ジャイの思いは適わず、ラージとティアは遂に結婚式を挙げる。やがて二人の間には息子が生まれる。 一方、ティアを忘れられないジャイはアルコールで気を紛らわすようになっていた。酔っ払いながらアニターを乗せて車を運転していたとき、ジャイは交通事故を起こしてしまう。偶然にも事故の相手はラージとティアの乗った車だった。この事故によりラージとアニターは死に、ティアは記憶喪失になってしまう。しかもティアの脳の損傷は深刻で、過去の出来事を思い出すと、ショックで気が狂うか死んでしまう可能性もあった。何とかティアに過去の思い出を思い出させないようにするしかなかった。 ティアの肉親は母親(ラーキー)と息子だけだった。母親は事故を起こしたジャイを憎むが、ジャイは何とか償いをしたいと申し出る。ジャイはティアの精神状態を安静に保つために彼女と母親をケープタウンへ連れて行く。ティアには本当のことを隠し、ジャイが交通事故で妻のアニターを失ったことにする。そしてティアとラージの息子は、ジャイとアニターの息子ということにする。そしてティアと母親はジャイの家に住むことになった。こうしてジャイとティアは新たな関係を築き始めることになった。 ティアは記憶を失ってしまったことを悔しがるが、新しい人生を歩み始める決心をしていた。そしてジャイと過ごす内に彼を好きになる。しかしティアの母親はジャイを憎んでおり、ティアとジャイが接近することを禁じていた。またジャイはティアのことを愛していたが、ティアの記憶がもし戻ったら彼女は自分を憎むことが分かっていたので、彼女に心を開くことができなかった。唯一ジャイの父親だけが、ジャイとティアの仲を結びつける努力を続けた。父親の説得により、ティアの母親もティアがジャイと再婚することに同意する。 しかしジャイ自身がティアとの結婚を拒否した。絶望したティアは何もかも信じられなくなり、家を飛び出して自殺を計る。それを止めたジャイは、ティアに本当のことを全て打ち明ける。ティアは事実を知って驚くが、それでも記憶は戻らなかった。ジャイは改めてティアに愛を打ち明ける。こうしてジャイとティアは結ばれたのだった。
記憶喪失というありふれたテーマの映画ではあるが、3時間飽きずに見通すことができた。それはおそらくアイシュワリヤー・ラーイの魅力に依るところが大きいだろう。この映画はアイシュワリヤーのためにあるようなものである。彼女の美しさは今更言うまでもないが、演技にダンスに大活躍していた。
一方、依然としてあまりパッとしないのがアルジュン・ラームパールである。顔は日本人受けしそうな、細身でスッキリとした二枚目顔なのだが、声が低すぎる上にセリフ棒読みの癖が抜けていない。それに彼のダンスシーンはほとんど登場しない。多分アルジュン・ラームパールはあまり踊りが得意ではないのだろう。彼は精力的に踊るアイシュワリヤーの横でただ突っ立ってるだけだった。アルジュン・ラームパールのファンになって1年以上経つが、さすがに彼の大根役者ぶりをこれだけ見せ付けられると、かなり不安になってしまう。早くヒット作を出さないと、彼の役者生命もそう長くは続かないだろう。
普通、映画中で記憶喪失になった人は、最後には記憶が戻るのが常だと思うのだが、この映画では最後まで記憶が戻らなかった。そしてそのおかげでティアとジャイは結ばれることになった。だが、結婚後にもし記憶が戻ったらどうなるのだろうか?また、交通事故で記憶喪失になるという筋書はまだ許せるのだが、記憶が戻ることによってティアの脳が損なわれる、だからティアに過去を思い出させてはならない、という設定はどうも強引すぎるような気がする。全体としてはきれいなラブストーリーに収まっていたが、細かいところではやはりインド映画的強引さが見え隠れしていて興醒めだ。
音楽はナディーム・シュラヴァン。この映画のサントラはあまり魅力を感じなかった。それゆえか、ダンスシーンからも気合を感じなかった。せっかく後半部分は南アフリカが舞台となっているので、もっとアフリカっぽい要素を盛り込んだダンスシーンがあってもよかったのではないだろうか。
そういえばアイシュワリヤーって、左の二の腕に大きなホクロがある。今日初めて気が付いた。