Jahaan Chaar Yaar

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Jahaan Chaar Yaar
「Jahaan Chaar Yaar」

 2022年9月16日公開の「Jahaan Chaar Yaar(4人の親友がいれば)」は、学生時代の親友で、それぞれ結婚生活に問題を抱える4人の既婚女性たちが、ゴアへ自分探しの旅に出るという内容の女性向け映画である。2010年代から20年代にかけての女性中心映画トレンドを象徴する作品の一本だ。

 監督は、「Shaadi Mein Zaroor Aana」(2017年)や「Milan Talkies」(2019年)の脚本を書いたカマル・パーンデーイ。彼にとっては初監督作品である。キャストは、スワラー・バースカル、メヘル・ヴィージ、プージャー・チョープラー、シカー・タルサーニヤー、ギリーシュ・クルカルニー、マニーシュ・チャウダリー、ヴィバー・チッバル、アリー・クリー・ミルザー、スィムラン・グプター、ナヤニー・ディークシトなどである。

 劇中にはヴァルダーンプル、ナスィーバーバード、ファテープルという3つの地名が出て来る。これらはウッタル・プラデーシュ州にあることになっていたが、どれも架空の街である。たとえばヴァルダーンプルの風景として映し出される特徴的な橋はジャウンプルのシャーヒー橋である。

 ヴァルダーンプル。シヴァーンギー・シュクラー(スワラー・バースカル)は義父母・義姉と同居しており、家事を一手に引き受けていた。メイドを雇って楽になりたかったが、夫のシャイレーシュは金欠を理由に首を縦に振らなかった。ナスィーバーバードに住むサキーナー(プージャー・チョープラー)は、義母から子供ができない原因を押しつけられていた。サキーナーは検査をしてもらったが異常はなく、夫ムラードが原因である可能性が高かったが、義母はムラードを別の女性と結婚させようとしていた。ファテープルに住むネーハー(シカー・タルサーニヤー)は、夫が職場の女性と不倫をしていることを知っていながら言い出せずにいた。シヴァーンギー、サキーナー、ネーハーは学生時代の親友であった。

 あるとき、ムンバイーに住むマーンスィー(メヘル・ヴィージ)から連絡がある。マーンスィーも三人の学生時代の友人であったが、重病を患い危篤状態だという。シヴァーンギー、サキーナー、ネーハーは家族に説明し、マーンスィーに最期に会うためムンバイーへ列車で向かう。だが、その列車にはなんとマーンスィー自身が乗っていた。四人はかつて、いつか一緒にゴアへ行きたいと夢を語らっていた。マーンスィーは三人を家から連れ出すために仮病を使ったのだった。四人はゴアに着いた。

 ゴアで四人はピーター・ゴメスというオーストラリア人男性と出会う。羽を伸ばしたかった四人は夜にピーターを部屋に呼び寄せパーティーをする。だが、彼女たちが目を離した隙にピーターは何者かに撃たれて死んでいた。

 事件を担当することになった警察官がマドゥカル・ラーネー(ギリーシュ・クルカルニー)であった。マドゥカルは四人を容疑者として警察署に連行するが、彼女たちが正直に経緯を話したため、とりあえず釈放する。その直後、四人は何者かから銃撃を受ける。幸い、四人とも無事だった。

 マドゥカルは犯人を捕まえるため、四人を泳がせ、部下に監視させる。それでも四人は誘拐されてしまうのだが反撃したことで誘拐犯を捕まえることに成功する。誘拐犯はターニヤー(スィムラン・グプター)の名前を出した。

 ターニヤーはマドゥカルの上司ダラムヴィール・フーダー警部(マニーシュ・チャウダリー)の愛人だった。マドゥカルはフーダー警部を疑うが、彼はターニヤーに頼まれ、彼女がピーターと共に映っているセックスビデオを回収するために動いているだけだった。殺人犯は別にいた。その後、マーンスィーが何者かに誘拐される。

 マドゥカルはターニヤーの携帯電話番号から彼女の居場所を特定する。四人は警察より一足先に踏み込む。犯人はなんと、マーンスィーの夫アーシーシュ(アリー・クリー・ミルザー)だった。マーンスィーはキャリアウーマンであり、出来の悪いアーシーシュを蔑ろにしていた。アーシーシュはターニヤーと出会い、共謀してマーンスィーを殺そうとしていたのだった。四人の活躍によりアーシーシュとターニヤーは逮捕される。ゴアで学びを得た四人はそれぞれ反省と決意と共に各家庭に戻る。

 シヴァーンギー、サキーナー、ネーハー、マーンスィーという4人の既婚女性たちを主人公にした物語である。もちろん、それぞれ女性として結婚生活に何らかの問題を抱えている。シヴァーンギーは、義母や義姉にこき使われ疲労困憊していた。サキーナーは義母から子供ができない原因を理不尽に押しつけられていた。ネーハーは夫の不倫に悩まされていた。三人とも家父長制の被害者と捉えることができるだろう。

 ところが、仮病を使って彼女たちをゴア旅行に招待したマーンスィーだけは状況が正反対だった。彼女は確かに既婚女性であったが、家庭内で主導権を握っていたのは夫のアーシーシュではなく彼女だった。マーンスィーは仕事のできる女性であり、おそらく夫よりも収入が上で、夫を見下していた。このアーシーシュが終盤で真犯人として浮上する。よって、「Jahaan Chaar Yaar」は単純に家父長制の犠牲になっている不幸な女性たちを同情的に描き出した一方的な作品ではない。むしろ、男女どちらにも肩入れせず、夫婦が対等であることを支持する内容である。

 それでも、インド社会において圧倒的に弱い立場に立たされているのは女性である。そんな女性たちに対して知恵を授ける役割も担っていたように感じた。たとえばフーダー警部は妻を「押し」、罵詈雑言を浴びせた。これについて部下のマドゥカルは「家庭内暴力」として立件されうるということを指摘していた。

 また、4人の主人公の内、サキーナーだけはイスラーム教徒である。彼女は夫と離婚の危機を迎えていた。イスラーム教において有名なのが「トリプル・タラーク」だ。男性は妻に対して3回「タラーク」と言えば離婚することができる。ただ、インドにおいて「トリプル・タラーク」は2019年から違法となった。劇中で、「トリプル・タラーク」をしたことで逮捕され服役しているイスラーム教徒男性がたくさんいることが言及されており、時代を反映していた。

 これらの描写によって、女性を守るための法整備が着々となされていることを女性たちに知らしめようとしているように感じた。

 起用されているのは、決してスターではないが、渋い位置にいる女優たちだ。四人の中では主役級のシヴァーンギー役を演じたスワラー・バースカルは「Raanjhanaa」(2013年)や「Prem Ratan Dhan Payo」(2015年/邦題:プレーム兄貴、王になる)などに出演していた実力派女優だ。主演作もあるのだが、娯楽映画では脇役ばかりで派手さはない。マーンスィー役のメヘル・ヴィージは「Bajrangi Bhaijaan」(2015年/邦題:バジュランギおじさんと、小さな迷子)での母親役が印象に残っている女優である。サキーナー役のプージャー・チョープラーは2009年のミス・インディア・ワールドであり、「Commando: A One Man Army」(2013年)などで主演経験があるがいまいち売れていない。ネーハー役のシカー・タルサーニヤーは、著名な個性派俳優ティークー・タルサーニヤーの娘であるが、やはり伸び悩んできた。

 「Jahaan Chaar Yaar」は、既婚女性たち4人が連れ立ってゴア旅行に行き、そこでトラブルに巻き込まれたことで、妻や嫁としての正しい立ち位置を学ぶという内容の女性向け映画である。その精神は素晴らしいが、監督が未熟で説得力あるストーリーと共にメッセージを発信できていなかった。興行的にも失敗に終わっている。ただ、あまり目立っていない渋めの女優たちが前面に押し出されているので、新鮮なイメージはある。あまり期待せずに鑑賞すると吉である。