Chalo Jeete Hain

3.5
Chalo Jeete Hain
「Chalo Jeete Hain」

 30分ほどの短編映画「Chalo Jeete Hain(さあ、生きよう)」は、インド人民党(BJP)のカリスマ政治家で2014年から首相を務めるナレーンドラ・モーディーの子供時代を切り取って映画化したものだ。2018年7月24日に大統領官邸でプレミア上映され、7月29日にTV放映およびOTT配信された。

 監督は「Dekh Indian Circus」(2011年)などのマンゲーシュ・ハーダワレー。「Raanjhanaa」(2013年)などのアーナンド・L・ラーイがプレゼンテーターを務め、Tシリーズのブーシャン・クマールがプロデューサーに名を連ねている。有名な俳優は出ておらず、子役俳優のダイリヤ・ダールジーがナールー・モーディー役を演じている他、デーヴ・モーディー、ディプティー・アヴラン、ラージーヴ・サクセーナー、アジャイ・クマールなどが出演している。

 ナレーンドラ・モーディー首相は1950年、グジャラート州ヴァドナガルに生まれた。家は貧しく、子供の頃は学校の合間に駅でチャーイを売って家計を支えていたことは有名な話だ。「Chalo Jeete Hain」の主人公ナールー・モーディーも同様に駅でチャーイを売っており、この辺りは現実世界のモーディー首相そのものだといえる。

 ナールーは偉大な宗教改革者スワーミー・ヴィヴェーカーナンダの以下の格言に多大な影響を受けていた。

बस वही जीते हैं, जो दूसरों के लिए जीते हैंバス ワヒー ジーテー ハェン ジョー ドゥースローン ケ リエ ジーテー ハェン
他人のために生きるものだけが生きる

 彼は周囲の大人に、「あなたは誰のために生きていますか?」と質問して回る。大半の大人は彼の素朴な質問にまともに答えようとしないが、学校の先生(アジャイ・クマール)だけは真剣に答えてくれた。彼は、インド独立のために命を捧げたバガト・スィンなどを引き合いに出して、国のために命を差し出した者は永遠に記憶されると話した。

 ナールーが目下気になっていたのは、クラスメイトのハリーシュ(デーヴ・モーディー)が学校に来ていないことだった。ハリーシュは駅で乞食をしており、母親からは学校へ行くことを止められていた。しかも制服を持っていなかった。だが、ハリーシュはとても聡明な子供で勉強好きだった。ナールーは何とかハリーシュを学校に通わせたいと考える。

 ナールーが思い付き行動に移したのは、演劇を上演して観客を呼び込み、チケット代を稼ぐことだった。実際にナレーンドラ・モーディー首相は子供時代に演劇をしていたとされる。ナールーは不可触民への差別を題材にした演劇を上演し、成功させる。売り上げたお金はハリーシュの制服代や教科書代に使った。こうしてハリーシュは学校に通えるようになったのだった。

 「Chalo Jeete Hain」は、モーディー首相の神格化に加担するプロパガンダ映画との批判も受けている。確かにモーディー首相を貧者に優しく愛国心の強い人物として持ち上げるような内容だ。しかしながら、彼の子供時代の些細な思い出を静かに映画にしただけで、必要以上の政治的な意図は感じられない作品である。全くのフェイクだとも思われない。道徳の教科書にありそうな内容のストーリーであり、他人のために、国のために生きる美徳を教えている。