Jhansi Ki Rani Laxmi Bai

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Jhansi Ki Rani Laxmi Bai
「Jhansi Ki Rani Laxmi Bai」

 ウッタル・プラデーシュ州のジャーンスィーは、インド近代史に永遠に名前が刻まれた都市である。なぜなら、「ジャーンスィーの女王」として国民的な英雄に祭り上げられているラクシュミーバーイー(1828-1858年)所縁の都市だからだ。ジャーンスィー王国の王家に嫁いだラクシュミーバーイーは、1857年、第一次インド独立戦争もしくはスィパーヒー(セポイ)の乱が起こったとき、英国東インド会社軍に勇敢に立ち向かい、最後は戦場で戦死したと伝えられている。

 これまでラクシュミーバーイーの人生は何度も映画やTVドラマになってきた。近年においてラクシュミーバーイーの映画としてもっとも有名なのは、カンガナー・ラーナーウト主演の「Manikarnika: The Queen of Jhansi」(2019年/邦題:マニカルニカ ジャーンシーの女王)であろう。だが、その前に作られ、限定的に公開されていたラクシュミーバーイー映画があった。2012年3月30日公開の「Jhansi Ki Rani Laxmi Bai」である。

 監督はラージェーシュ・ミッタル。全く無名の監督である。ラクシュミーバーイーを演じるのはカシシュという、これまた全く無名の女優だ。キャストを見てみると、「Devdas」(2002年)で悪役カーリーバーブーを演じたミリンド・グナージーの名前があるが、それ以外はやはり聞いたこともないような俳優たちばかりだ。

 公開時にはインドに滞在していたが、この映画の存在は全く知らなかった。Box Office Indiaのデータによると、20劇場でしか上映されていないので、デリーでは上映されていなかったかもしれない。なぜか日本のAmazon Prime Videoで視聴可能だったので、2023年7月25日に鑑賞した。邦題は「ジャンシ・キ・ラニ・ラクシュミバイ」である。

 だが、はっきりいって学芸会レベルのお粗末な映画だった。しかも、ただでさえ駄作なのに、機械翻訳による日本語字幕が付いており、これが致命的に質を低めている。例えば、ヒンディー語の「नहींナヒーン(いいえ)」が軒並み「番号」と訳されていた。これはおそらく英語字幕の「No」が「No.(ナンバー)」と解釈され、このようにとんちんかんな日本語字幕を生み出してしまったのだろう。

 監督が情熱ひとつで少ない予算と共に作った映画であることは分かる。駄作は歴史の影に埋もれてくれれば誰にも迷惑を掛けないので、とやかくいう必要はない。だが、気付いたらこの超Z級の駄作がなぜかAmazon Prime Videoを通じて日本人の目に触れる状態になってしまっている。これは日本人の間にインド映画の汚名を広める原因になりかねず、由々しき事態だ。インド映画アンチによる工作なのではないかとすら思えてしまう。

 映画の内容は、ラクシュミーバーイーの生涯を、なるべく予算を掛けずに撮ったような感じになっている。例えば、ラクシュミーバーイーの伝説として有名な、馬に乗り、子供を背負って、ジャーンスィー城塞から飛び降りたというシーンは、「Jhansi Ki Rani Laxmi Bai」の中には見当たらなかった。おそらく撮影が困難だったため、割愛したのだろう。万事この調子であり、いざとなったらナレーションでごまかしてストーリーを先に進めている。

 途中、唐突にマンガル・パーンデーイにも焦点が当てられる。マンガル・パーンデーイは、アーミル・カーン主演の「Mangal Pandey: The Rising」(2005年)で大々的に取り上げられたフリーダムファイターだ。英国東インド会社軍のスィパーヒー(兵士)だった彼が1857年に起こした反乱は第一次インド独立戦争のきっかけになったとされている。だが、「Jhansi Ki Rani Laxmi Bai」はあくまでラクシュミーバーイーの映画であるはずであり、必要以上にマンガル・パーンデーイに時間を割く必要はなかったはずだ。こういうところにも監督の未熟さが出てしまっている。

 インド映画の文法に則って、いくつかダンスシーンも盛り込まれている。もちろん、曲から歌詞から振り付けまで、素人の域を出ないものばかりで、ますます盛り下がる。

 「Jhansi Ki Rani Laxmi Bai」は、無名の監督と無名の俳優による学芸会レベルの駄作である。おそらくこの映画評を読んでわざわざ観ようとする物好きな人はいないだろうが、一応、観てはならないと警告しておく。ラクシュミーバーイーについて知りたかったら、日本でも劇場一般公開の実績がある「Manikarnika: The Queen of Jhansi」の方が何十倍もいいので、必ずこちらを観るようにしてもらいたい。


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