2001年3月30日公開の「One 2 Ka 4」は、シャールク・カーン主演のアクションコメディー映画である。題名を直訳すると「1×2=4」になるが、このフレーズは人を騙す詐欺師や手品師を象徴している。大ヒット映画「Ram Lakhan」(1989年)の「My Name Is Lakhan」にある歌詞から取られている。2022年9月7日に鑑賞した。
監督はシャシラール・ナーイル。1980年代から活躍してきた監督であり、「One 2 Ka 4」は晩年の作品になる。音楽監督はARレヘマーン。主演はシャールク・カーンとジューヒー・チャーウラー。他に、ジャッキー・シュロフ、ニルマル・パーンデーイ、ディリープ・ジョーシー、ラージ・ズトシー、アーカーシュ・クラーナー、ファーティマー・サナー・シェーク(子役)などが出演している。
舞台はムンバイー。アルン・ヴァルマー警部(シャールク・カーン)は、ベテラン警官ジャーヴェード・アッバース警視正(ジャッキー・シュロフ)とコンビを組んでいた。ジャーヴェードの妻は亡くなっており、4人の子供を男手ひとつで育てていた。 ジャーヴェード警視正やアルン警部のチームは、麻薬密輸組織のドン、KKV(ニルマル・パーンデーイ)を麻薬と共に逮捕する。だが、証拠品として押収した麻薬はいつの間にか砂糖と入れ替えられており、証拠不十分でKKVは釈放される。警察内部に内通者がいる可能性が高かった。ジャーヴェード警視正はその調査に乗り出すが、ガサ入れ中に殉職してしまう。 ジャーヴェードの4人の子供とアルンは犬猿の仲だったが、アルンは彼らを引き取ることにする。だが、彼一人では無理だったので、道端で出会ったカセット売りギーター・チャウダリー(ジューヒー・チャーウラー)に来てもらう。ギーターはすぐに子供たちと仲良くなる。 アルンはKKVが経営するクラブに乗り込むが、そこでギーターそっくりのダンサーを見掛ける。だが、家に帰るとギーターはそこにいたため、別人だと考える。また、アルンは子供たちと共に暮らすために広い家が必要になり、そのためにはまとまった金が必要だった。そこでアルンはKKVから金を押収する。アルンは警察署から麻薬を盗んだ罪で逮捕され、KKVのクラブで秘密任務を遂行中だったギーターからもKKVから金を盗んだことを糾弾されて、停職処分になる。 アルンは、ジャーヴェード警視正を殺した犯人と警察内の内通者を見つけようと躍起になる。その中で彼は、中央捜査局(CBI)のチーフがKKVと内通していることを突き止める。チーフはKKVと国外脱出しようとしていたが、アルンとギーターはそれを止める。だが、チーフはサーワント(ラージ・ズトシー)に殺される。実はサーワントこそがジャーヴェード警視正を殺した犯人だった。アルンとギーターは、連れて来られた子供たちと力を合わせてサーワントを殺す。
「One 2 Ka 4」は、内容よりも、ARレヘマーン作曲の音楽で記憶されている映画だ。特に日本人にとっては、「Osaka Muraiya」というヘンテコな名前の曲が気になって仕方がない。日本人には、「大阪」の「村井屋」という意味に見えるが、単なる語呂合わせかもしれない。当のインド人には全くチンプンカンプンだが、キャッチーなフレーズであり、なぜか頭に残る。実はこの「Osaka Muraiya」は「One 2 Ka 4」のサントラの中でもっともヒットした曲でもあり、インド人は意味が分からないフレーズをシャウトして踊って楽しんでいた。
残念ながら、シャールク・カーンとジューヒー・チャーウラーという1990年代のゴールデンコンビを主演に据えていながら、ストーリーや映像はとても貧弱な映画だ。全く異なる2つの物語を無理矢理くっ付けて一本の映画にしたような作品で、ダンスシーンの入り方も唐突である。音楽以外、ほとんど取り柄のない映画である。
ただ、前半は一定の面白さがある。主人公アルンが、死んだ相棒ジャーヴェードが育てていた4人の子供を引き取ることになり、苦労するという内容で、シャールク・カーンとジューヒー・チャーウラーのコミカルな演技が楽しい。また、後に「Dangal」(2016年/邦題:ダンガル きっと、つよくなる)でデビューしたファーティマー・サナー・シェークが子役で出演しており、注目される。
やはり、アクションシーンの映像化が最大の弱点で、警察映画的要素が強くなる後半はかなり退屈だ。黒幕も容易に予想可能であり、サスペンス性にも乏しい。
「One 2 Ka 4」は、ARレヘマーンが手掛けた音楽で人々に記憶されている映画である。内容自体に大きな見所はないが、シャールク・カーンとジューヒー・チャーウラーの共演という点、また、後に女優としてデビューするファーティマー・サナー・シェークが子役で出演しているという点あたりに話題性がある。