2013年9月13日公開のヒンディー語映画「John Day」は、「カサブランカ」と呼ばれる地所を巡るクライムサスペンス映画だ。スペイン映画「Box 507」(2002年)の非公式リメイクとされている。
監督は新人のアヒショール・ソロモン。主演はナスィールッディーン・シャーとランディープ・フッダー。他に、シェールナーズ・パテール、エレナ・カザン、シャラト・サクセーナー、ヴィピン・シャルマー、マカランド・デーシュパーンデー、デンジル・スミスなどが出演している。
舞台はムンバイー。ジョン・デー(ナスィールッディーン・シャー)は銀行の頭取だった。最近、娘のパールをカサブランカという地所の森林火災で亡くしており、妻のマリア(シェールナーズ・パテール)はふさぎ込んでいた。 ある日、デー宅に強盗が入り、マリアが人質に取られる。電話を受けたジョンは犯人の言うがまま、銀行強盗に協力せざるを得なくなる。銀行強盗たちはロッカーから金品と書類を奪って逃走したが、犯人が残したファイルに、カサブランカに関するものがあった。ジョンはそれを使って、娘の死の謎を追う。また、マリアは強盗に頭を強打され、昏睡状態となる。 一方、銀行強盗のニュースを聞いた警察官ガウタム(ランディープ・フッダー)は、恋人のタバッスム(エレナ・カザン)を銀行に行かせる。ガウタムはカサブランカの書類が必要だったが、なくなっていた。カサブランカは、マフィアのカーン・サーブ(シャラト・サクセーナー)と共に不正をして手に入れた土地だった。わざと火災を起こして保険金を手にしたが、そこにたまたまいたパールが死んでしまったのだった。ガウタムはカサブランカの書類を、カーン・サーブのライバルで、ドバイを拠点とするアニース・パターンに売り渡そうとしていた。ガウタムはカーン・サーブに呼ばれ、アニースからも書類を催促される。ガウタムは部下のシンデー(ヴィピン・シャルマー)に銀行強盗たちを探させる。だが、彼らは書類を持っていないことが分かった。 ガウタムは、入院したマリアを人質にしてジョンから書類を奪おうとしたが、ジョンはカーン・サーブと手を結び、タバッスムを人質に取ってジョンを誘き寄せた。銃撃戦が起き、タバッスム、カーン・サーブ、ガウタムは死ぬ。
競演する2人の主演、ナスィールッディーン・シャーとランディープ・フッダーは素晴らしい俳優であり、この「John Day」でも素晴らしい演技をしていた。映画全体を貫く重厚な雰囲気や、キリスト教とイスラーム教の文化を背景としている点も魅力に感じた。しかし、肝心のストーリーがあちこちに散らかっていて、主役の2人が何を目的に行動しているのかよく分からず、物語を追うのが苦痛だった。もう少し分かりやすく説明を加え、編集をしてくれれば、一定以上の評価をすることができたのだが、この状態では独りよがりの作品になってしまっていた。
物語の中心となるアイテムは、カサブランカという名の地所に関する書類である。これは、ジョンの勤める銀行のロッカーに収められていた。それをジョンが手にすることになるのだが、まずその点が分かりにくかった。ジョンが強盗を雇ってそれを盗み出したのか、それともたまたま強盗が入ってその書類をジョンの前に落としたのか、様々な解釈が成り立つのだが、そんなところに解釈の余地を残していたら先に進めなくなってしまう。
また、カサブランカの地所や、そこで起こった森林火災などは、政治家、マフィア、警察が絡む汚職案件だったのだが、それも後から唐突に明かされていて、観客は全く置いてけぼりにされてしまう。さらに、カサブランカを巡って、カーン・サーブとアニースというライバル・マフィア同士の抗争も繰り広げられるのだが、なぜカサブランカをそんなに欲しがるのか、それすらも分からなかった。
その一方で、グロテスクなシーンも目立った。ガウタムが人の舌を噛み切ったり、ジョンが人の喉を噛みちぎったりする。そんなシーンを無理に入れる必要性もないのに、である。原作を忠実になぞっただけかもしれないが、チグハグな印象を受けた。
「John Day」は、主演ナスィールッディーン・シャーとランディープ・フッダーが光るものの、ストーリーテーリングが下手で何が起こっているかよく分からない時間が最初から最後まで続く、苦痛な作品である。観る必要はない映画だ。