Shudra: The Rising?

1.5
「Shudra: The Rising?」

 2012年10月19日公開の「Shudra: The Rising」は、カースト制度の中で下層に位置づけられるシュードラの問題を扱った映画である。映画の冒頭では、西アジアからインド亜大陸にやって来たアーリヤ人が先住民を支配し、彼らを隷属化して、「シュードラ」と呼んだと説明されている。しかしながら、現代では社会の最下層にいる人々は不可触民であり、従来「シュードラ」と呼ばれてきた人々よりも下になる。古代のシュードラと現代の不可触民を意図的に混同して提示しているように感じられる。また、映画の最後では、インドのカースト問題を世界各地の人種差別問題と並べて語られており、乱暴な語り口のようにも思えた。

 監督はサンジーヴ・ジャーイスワール。キャストは、キラン・シャラド、プラヴィーン・ベイビー、シュリーダル・ドゥベー、マヘーシュ・バルラージ、アーレフ・ラージプート、ガウリー・シャンカル、プリヤー・アンナトラーム、シャバジ・バーウェージャー、サティヤム・チャウハーンなど。無名の監督と無名の俳優ばかりである。

 シュードラの村に住むチャルナー(プラヴィーン・ベイビー)の妻サンドリー(キラン・シャラド)は、一帯を支配するカルタール・スィン(シャバジ・バーウェージャー)の家に呼ばれ、妊娠中だったにもかかわらず性暴行を受ける。サンドリーを止めようとしたチャルナーはカルタールの取り巻きから暴行を受け、その怪我とショックが原因で死んでしまう。

 同じ村に住むバドリー(シュリーダル・ドゥベー)、ベールー(マヘーシュ・バルラージ)、バーラー(アーレフ・ラージプート)、マーダヴ(ガウリー・シャンカル)も、シュードラであることで多大な差別を受けてきた。チャルナーの葬儀が行われた晩、彼らは反旗を翻すことを決意する。ちょうどカルタールの息子が村に戻ってくるところだった。彼らはカルタールの息子を惨殺する。

 息子の死を知ったカルタールは怒り狂う。殺人の現場にシュードラの身に付ける鈴が落ちていたことから犯人はシュードラであることを知り、シュードラの村を焼き払う。バドリー、ベールー、バーラー、マーダヴ、サンドリーは殺される。

 シュードラまたは不可触民がいかに抑圧されてきたかを映像化し拡散する目的で作られた映画である。ただ、冒頭でも述べた通り、古代のシュードラと現代の不可触民の区別が付けられておらず、しかも一体どの時代の物語なのかもよく分からない。丁寧な時代考証はされておらず、古代と中世がごちゃ混ぜになったような奇妙な世界観の中でストーリーが進む。登場人物が話す言葉はヒンディー語のブラジ方言である。

 この映画がユニークなのは、不可触民が強要された身なりが再現されていることだ。映画に登場するシュードラたちは首から壺を下げている。これは、ツバを地面に落とさないためである。また、ホウキを腰にくくりつけ、尻尾のように後ろに垂らしている。これは、彼らの足跡が残らないようにするためである。さらに、シュードラたちは足に鈴を付けている。これは、シュードラの接近をいち早く周知し、警戒してもらうためである。このように、まずは外見から、彼らがいかに差別的な待遇を受けてきたかが示される。もちろん、現代ではこのような身なりはさすがに強要されていない。

 映画の中には複数のシュードラが登場する。彼らはそれぞれ上位カーストから酷い差別を受ける。主に差別の主体となっているのは、ブラーフマンとクシャトリヤ(タークル)である。

 ブラーフマンは、シュードラが寺院に入場することを禁じた上に、シュードラがブラーフマンの真似事をしてマントラを唱えることを大罪とした。「オーム・ナマー・シヴァーイ」というシヴァ神を賛美するマントラをつぶやいてしまった子供の舌をブラーフマンは無慈悲にも切り落とし、殺してしまう。

 クシャトリヤは、気に入ったシュードラの女性を献上させ、身体を貪る。そして、シュードラに息子を暗殺されると、シュードラの村を焼き払い皆殺しにしてしまう。

 他にも、シュードラが水を汲むことを禁じられるシーンもあった。汚染を避けるため、不可触民は不可触民専用の井戸などから水を汲むことを社会から強要されている。

 不可触民問題を取り上げるのはいいのだが、ストーリーそっちのけで彼らが受けてきた差別の描写に注力されるため、娯楽作品としては失格である。

 「Shudra: The Rising?」は、古代のカースト制度で最下層に位置づけられるシュードラと、現代のカースト制度の中で最下層に位置づけられる不可触民を敢えて同一視し、不可触民が受けてきた差別を並べて見せたショーケースのような作品である。そのおかげでストーリー性は弱く、全体として完成度は低い。唯一、不可触民のファッションは関心を引くかもしれない。ただそれだけの映画である。


Shudra The Rising | Full HD | Award Winning Movie | Sanjiv Jaiswal