Manjummel Boys (Malayalam)

4.0
Manjummel Boys
「Manjummel Boys」

 2024年2月22日公開のマラヤーラム語映画「Manjummel Boys」は、タミル・ナードゥ州コダイカーナル近くにあるグナー洞窟で2006年に実際に起こった事件を題材にしたサバイバル映画である。

 グナー洞窟は、カマル・ハーサン主演の「Gunaa」(1991年)でロケ地になったことで有名になり、その名称が付いた洞窟であるが、英領時代には「悪魔の台所(Devil’s Kitchen)」と呼ばれていた。物見遊山で訪れた観光客が何人も行方不明になっている危険な洞窟である。2006年にもケーララ州から来た若者の一団の一人が穴に落ちてしまった。しかし、その一団でリーダー格だったシジュ・デーヴィッドという青年が自ら志願して穴に潜り、救出した。グナー洞窟で行方不明になって生還した例はこれが唯一であるという。

 監督はチダンバラム。キャストは、ソウビン・シャーヒル、シュリーナート・バースィ、バールー・ヴァルギーズ、ガナパティ、ラールJr.、ディーパク・パランボール、アビラーム・ラーダークリシュナン、ヴィシュヌ・レーグー、カーリド・レヘマーン、、シェビン・ベンソン、ジョージ・マリヤン、ラーマチャンドラン・ドゥライラージなどである。

 2006年に、ケーララ州コーチのマンジュメル地区に住む10人の青年たち、通称「マンジュメル・ボーイズ」は、オーナム祭の休暇中にタミル・ナードゥ州コダイカーナルを旅行した。彼らはグナー洞窟に立ち寄るが、調子に乗って立入禁止区域に入り込み、一団の一人スバーシュ(シュリーナート・バースィ)が穴に落ちてしまう。残った友人たちはローカルガイド、森林警備隊、地元民、警察などの助けを呼ぶが、その穴に落ちた者は二度と帰ってこないことを知っていた彼らは最初から匙を投げていた。

 マンジュメル・ボーイズは諦めずにスバーシュに呼びかけ続けた。底なしの穴の途中に引っ掛かって気を失っていたスバーシュは意識を取り戻し、呼びかけに答える。すぐに救出の準備に取りかかるが、警官の中に誰も穴の中に入り込もうとする者はなかった。

 一団の中でリーダー格だったシジュ・デーヴィッド、通称クッタン(ソウビン・シャーヒル)は自ら志願してロープに吊り下げられて穴の底に潜り込む。クッタンはスバーシュを見つけ出し、彼をロープで自らに縛り付ける。日頃から綱引きで鍛えていたマンジュメル・ボーイズは力を合わせてクッタンとスバーシュを引き上げる。クッタンの勇敢な行動によりスバーシュはグナー洞窟の穴に落ちた後に帰ってきた唯一の生還者となり、クッタンは功績を讃えられて人命救出賞を受賞する。

 どれだけの深さがあるのか分からないような底なしの穴に落ちた人を、その仲間たちが諦めずに救出する物語である。あらすじにしてしまうと簡潔に終わってしまうのだが、実際に起こった事件を手に汗握る緊迫感のあるサバイバル映画にまとめることができたのは、チダンバラム監督の手腕であろう。

 序盤から正直いって心地よい感触を受けなかった。「~ボーイズ」という割には登場人物の見た目は皆おじさんである。そうするとどうしても一定の分別を期待してしまうのだが、彼らはいい年して立入禁止区域にズカズカと入り込むなど、迷惑行為をしていた。しかも観光地に「マンジュメル・ボーイズ」と落書きをする始末だ。こんな騒がしいインド人観光客の一団が日本に来たら困るな、と考えながら観ていた。

 マンジュメル・ボーイズの中でも大人しめな性格をしていたスバーシュがグナー洞窟で穴に落ちたところで映画の雰囲気はガラリと変わる。それまでは目的もなくダラダラと進んでいるように見えたが、そこからは一転してスバーシュ救出という目的が浮上し、緊張感のあるシーンの連続となる。大雨が降り始め、スバーシュの落ちた穴の中に容赦なく水が注ぎ込む。禁忌を犯した人間に大自然の罰が下る。

 スバーシュが生還できたのは、マンジュメル・ボーイズの諦めない心と、リーダー格のクッタンが勇気を奮い起こして行った行動があったからだ。彼らの友情関係は、所々で差し挟まれる少年時代の回想シーンによって暗示される。マンジュメル・ボーイズは子供の頃から共に遊び、助け合ってきた仲であることが示され、常に仲間を助けてきたクッタンが今回も自ら進み出たのだった。

 神々しいほど美しいロケーションで撮影が行われていたが、これは実際のグナー洞窟であるらしい。ただし、スバーシュが落ちた穴周辺の風景や穴の中は、緻密に再現されたセットとのことである。

 「Manjummel Boys」は、実話をもとに手に汗握るサバイバル映画を生み出すことに成功した作品だ。マラヤーラム語映画として初めて20億ルピーの興行収入を達成した映画となるほど大ヒットした。製作費はその10分の1の2億ルピーほどとのことである。お金を掛けずに優れた映画を作るのはマラヤーラム語映画界が得意とするところだ。必見の映画である。