2023年10月2日からJioCinemaで配信開始された「Gangster Ganga」は、祖母と息子の絆を描いた25分ほどの短編映画である。
監督はサーヒル・ラーケーシュ・グローヴァー。「Mission Mangal」（2019年／邦題：ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画）や「Tadka…」（2022年）などで助監督を務めた経験があり、過去に数本の短編映画を撮っている。キャストはスプリヤー・パータク、ヴィール・ラージワント・スィン、アパルジター・デー、プールヴァー・パラーグ、ヴィール・バヌシャーリーなどである。
ヴェード（ヴィール・ラージワント・スィン）は母親に頼まれて祖母ガンガー（スプリヤー・パータク）の世話をすることになり、久しぶりに実家に帰る。ガンガーは転んで足を怪我しており、移動に難儀していた。メイドのラーダー（アパルジター・デー）がいたため、家事は彼女がやってくれていたが、ラーダーの息子が怪我をしたため、急に出て行ってしまった。ヴェードは一人でガンガーの面倒を見なくてはならなくなった。 しかしながら、久しぶりにガンガーと水入らずの時間を過ごすことができ、ガンガーからは祖父の話なども聞くことができた。仕事がうまくいかずガンガーを怒鳴ってしまったこともあったが、ガンガーの言葉通り、塞翁が馬だった。ラーダーと母親が相次いで帰ってきたため、ヴェードはガンガーを世話する必要はなくなるが、彼女とはいつの間にか悩みを語り合う友達のような関係になっていた。
題名が題名なので、てっきり女性ギャングの物語かと思ったが、全く正反対の、心温まる小品だった。題名の理由は、祖母のガンガーがインスタグラムにはまっており、ハンドルネームを「ギャングスター」にしているからだった。また、ガンガーがギャングスターを気取って写真を撮ったり、孫のヴェードと一緒に煙草を吸ったりする場面もあり、一般的なインドの祖母像とは異なる、ファンキーな祖母であることも暗示している。
ヴェードは普段、実家から離れた場所で暮らし、仕事をしていると見える。今回、祖母と同居する母親がしばらく留守にするため、ヴェードが実家に戻って祖母の面倒を見ることになった。しかしながらヴェードは仕事を持ち込んでおり、祖母はほとんどそっちのけで仕事をするか、もしくはゲームをして時間を過ごしていた。それが一変するのは、メイドのラーダーが急用でしばらく仕事に来られなくなってからだ。ヴェードは祖母の面倒を一人で見なくてはならなくなるが、その時間が彼の人生にとって貴重なものになる。祖母とじっくり話をする機会ができ、それが仕事の悩みも和らげてくれた。祖父母の知恵はありがたいものだということがこの映画から読み取れる教訓であろう。
祖母ガンガーを演じたスプリヤー・パータクはヒンディー語映画ではお馴染みの脇役俳優であり、お母さん役やお祖母さん役を演じることが多い。女優ディーナー・パータクの娘であり、幼い頃から演劇や映画の現場に親しんで育ったおかげで、熟練の演技ができる女優である。今回は、気難しいが心優しい祖母を絶妙に演じていた。
ヴェードを演じたヴィール・ラージワント・スィンは、かつて「Jab We Met」（2007年）などの映画にも出演していたが、近年はTVドラマの方でよく活躍している男優だ。落ち着いた演技ができる男優で好感が持てた。
「Gangster Ganga」は、ファンキーな祖母とワーカホリックな孫が束の間の交流を通して絆を深め合うハートウォーミングな物語だ。スプリヤー・パータクの演技が突出している。祖母の存在の大きさは万国共通なのだということも分かる作品だ。