Googly Gumm Hai

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Googly Gumm Hai
「Googly Gumm Hai」

 2021年7月2日からShemarooMeで配信開始された「Googly Gumm Hai(グーグリーが行方不明になった)」は、登山中に事故に遭ったカップルを主人公にしたスリラー映画である。

 監督はアジャイ・K・サクラーニー。過去に編集者としていくつかの作品に関わっているが、全く知らない作品ばかりである。キャストはラクシャー・クマーワト、ムリドゥル・ラージ・アーナンド、モーヒト・マットゥー、ムケーシュ・ラクターなどで、やはり無名の俳優たちばかりだ。

 ショーリヤ(ムリドゥル・ラージ・アーナンド)とグーグリー(ラクシャー・クマーワト)のカップルはヴァカンスのためにヒマーチャル・プラデーシュ州ダラムシャーラーを訪れた。グーグリーの提案で登山とキャンプをすることになり、山頂でショーリヤはグーグリーにプロポーズをする。ところがその直後にショーリヤは崖から足を踏み外し、谷間に落ちてしまう。ショーリヤは身動きが取れない状態だったが意識はあった。グーグリーは必死でショーリヤを助けようとする。一方、ショーリヤは朦朧とした意識の中で、同じく谷間に落ちて横たわる亡霊(ムケーシュ・ラクター)を目にする。

 ガイドのランガー(モーヒト・マットゥー)はグーグリーを探して町中を歩き回り、やがて山の中に入る。ランガーはロープを使って助け出すが、上がってきたのはショーリヤが見た亡霊だった。その亡霊も名前はグーグリー(男)といい、ランガーは彼の方を探していたのだった。助け出されたグーグリーは山小屋で休むが、そのとき前をカップルが通りがかる。それはショーリヤとグーグリー(女)であった。

 遭難して谷底に落ちた恋人を助けるために女性が奮闘する物語、と思いきや、最後に意外などんでん返しがある作品だった。しかし、基本的には低予算映画であり、どんでん返しも意表を突きすぎていて現実性がなく、結果的に駄作と呼ばざるを得ないクオリティーの映画で終わっていた。

 まず、グーグリーの動きが杜撰すぎる。恋人が谷底に落下してうろたえるのだが、彼のためにほとんど何もしてやることができず、イライラする。例えば、ショーリヤが谷底に落ちて一晩、グーグリーはただテントの中で泣いていただけで、具体的な行動を起こしていない。翌朝、谷底に倒れているショーリヤに呼び掛けると、彼はグーグリーに水を求める。グーグリーは「水が欲しいのね?」と答えるが、一晩中負傷して倒れていたのだから、水くらい欲しくなるのは当たり前のことだ。なぜ気を利かせてもっと早く水を届けてあげられなかったのか。しかもグーグリーはテントから水筒を持ち出すが、つまずいて水筒を谷底に落とし紛失してしまう。それでもグーグリーは工夫してショーリヤに水を届けようとするが、それだけで上映時間の8割が過ぎ去る。ほぼ、グーグリーのドジな行動を見させられるだけの映画だ。

 ショーリヤは朦朧とした意識の中で、同じく谷底に落ちて死んだと思われる亡霊を見る。ショーリヤはもうすぐ自分も同様に亡霊となることを覚悟する。ところが映画の最後でそれがひっくり返される。なんと亡霊と思われた人物の方が実体であり、彼の名前もグーグリーといった。ショーリヤとグーグリー(女)のガイドをしていたと思われたランガーがグーグリーを探して彷徨う様子が時々差し挟まれるが、彼が探していたのは女性の方のグーグリーではなく、男性の方のグーグリーであった。しかもショーリヤとグーグリー(女)はこれから山頂を目指して登山をするところであった。谷底に落ちたグーグリー(男)が見たショーリヤとグーグリー(女)の姿こそ妄想だったのである。そして、彼らの身にこれから起こることの暗示でもあった。

 衝撃のラストを用意するのはいいのだが、そのラストを観客に納得してもらうためには強力な論理性が必要になる。「Googly Gumm Hai」にはそれが欠如しており、全く支持できない終わり方だった。

 「Googly Gumm Hai」は、無名の監督と無名のキャストによる低予算のスリラー映画である。上映時間は1時間20分ほどだが、その内の最初の1時間は主人公の行動が愚鈍すぎるため、イライラして過ごすことになる。さらに悪いことに、我慢して観てもその先には観客を愚弄するようなラストしか待っていない。鑑賞に値しない映画である。