Aagaswadi (Marathi)

2.5
Aagaswadi
「Aagaswadi」

 「Aagaswadi」は、マハーラーシュトラ州サターラー県にあるアーガースワーディー村の干魃問題を描いた18分ほどの短編ドキュメンタリー映画である。2018年制作とされているが、プレミア上映は2019年10月15日のエーベルスヴァルデ・プロヴィンツィアーレ映画祭だと思われる。英題は「Village in the Sky」となっており、日本ではU-Nextにて「アーガースワーディ村」の邦題と共に配信された。

 アーガースワーディー村はマハーラーシュトラ州の村ということもあり、登場人物は皆、マラーティー語を話す。よって、マラーティー語の作品としていいだろう。

 監督はインド映画テレビ学校(FTII)卒のラーメーシュ・ホールボーレー。ホールボーレー監督自身が干魃と共に育ってきた経験があるという。映画の舞台になっているアーガースワーディー村は彼の生まれ故郷ではなさそうだが、やはり同じく水不足に悩んでいた。この村で、一人で井戸を掘る老人を主体にして撮ったドキュメンタリー映画が「Aagaswadi」だ。

 短い映画であり、映画の中に救いはない。アーガースワーディー村の空には巨大な風車がいくつも回っているのだが、この風車が発電した電気は村には来ていない。よって、アーガースワーディー村では頻繁に停電が起きる。村人たちは電力会社に二束三文で土地を買い上げられた。雇用が約束されていたがそれも反故にされ、村から若者たちは去って行った。村の学校も4年生までしかなく、子供に教育を受けさせるために村を出る家族も相次いでいる。状況を打開しようと村人たちは集会を開くが、「あのときああしていればよかった」という後悔しか出て来ない。全く明るい兆しは見えない。

 アーガースワーディー村にそびえ立つ風車は不気味な物音を立てながら都会のために電力を作り出し、村人たちは食い扶持に困って一人また一人と都会に吸収されていく。まるで都会に村の活力が吸い取られていっているようだ。おそらく、インドの多くの村が同じような問題を抱えているのだろう。

 ただ、説明が少なすぎて分かりにくい部分もあった。孤独に井戸を掘り続けていたのはビームラーオ・ジャーダヴという老人だったが、最後に彼が井戸から水を汲み上げるシーンがあった。彼が掘っていた井戸は完成したのだろうか。また、集会をしていた村人を突然の雨が襲うが、干魃といいながら雨が降っているのも不思議だった。

 「Aagaswadi」は、干魃によって疲弊し、都市に活力を奪われてつつある村を舞台にした短編ドキュメンタリー映画である。村の情景を映した映像は美しかったが、短くまとめられすぎていて何をいいたいのか分かりにくい部分もあった。