Tsunma, Tsunma: My Summer with the Female Monastics of the Himalaya (Taiwan)

3.0
Tsunma Tsunma
「Tsunma, Tsunma: My Summer with the Female Monastics of the Himalaya」

 「Tsunma, Tsunma: My Summer with the Female Monastics of the Himalaya」は、台湾人映画監督の林麗芳が50歳の節目にインドのチベット文化圏であるスピティ、ラダック、そしてダラムシャーラーで尼僧と共に過ごした一夏をカメラで捉えたドキュメンタリー映画である。2017年10月19日に台湾国際女性映画祭(台灣國際女性影展)でプレミア上映された。アジアンドキュメンタリーズでは「ツンマ ツンマ ヒマラヤの尼僧たちと過ごした夏」という邦題と共に配信されている。

 題名になっている「ツンマ(Tsunma)」とは尼僧のことである。林監督はスピティのヤンチェンチョリン尼僧院、ラダックのラダック尼僧協会、そしてダラムシャーラーのドルマ・リン尼僧院に滞在しながら、尼僧たちの日常を追い続けた。

 もっとも厳しい生活をしていたのはスピティのパンモ(Pangmo)に位置するヤンチェンチョリン尼僧院(Yangchen Choling Monastery)であり、映画の中でもこの尼僧院の尺が一番長かったように感じた。元々は洞窟から始まったスピティ地方初の尼僧院であり、尼僧たちが苦労を重ねて大きくしてきたようだ。

 ラダックで中心的に取り上げられていたのは、ラダック地方で初の女性アムチ(伝統医)になったツンマ・ツェリン・パルモである。彼女はレーに所在するラダック尼僧協会の会長を務めている。父親を病気で亡くしたことから医学を修めようと決意し、ダラムシャーラーで学を修めてラダックに戻り、アムチになった。

 スピティとラダックのエピソードは行ったり来たりしながら進んでいくのだが、最後にダラムシャーラーに場所が移る。ダラムシャーラーで取り上げられていたのはドルマ・リン尼僧院(Dolmaling Nunnery)であり、ここでゲシェマを目指すドルジェ・ワンモに焦点が当てられていた。ゲシェマとは、チベット仏教最高学位であるゲシェの女性版である。元々は男性のみに閉ざされていたゲシェの称号が女性にも開放され、ドルマ・リン尼僧院で勉強する尼僧たちもゲシェマを目指すようになった。

 しかしながら、思索の旅とはいえ、ほとんどは3ヶ所の尼僧院での日常が映し出されているだけだ。時々、林監督のナレーションが入るが、語られているのはチベット仏教などの説明で、彼女自身の内面的な気付きや成長などは語られない。ほとんど、インドのチベット仏教尼僧院を映し出した客観的なドキュメンタリー映画で終わってしまっている。

 「Tsunma, Tsunma: My Summer with the Female Monastics of the Himalaya」は、台湾人女性監督がインドを訪れて、チベット仏教の尼僧たちと生活をするというドキュメンタリー映画だ。ほとんど主観が入らず、彼女たちの日常を客観的に映し出している。ただ、盛り上がりに欠ける映像で、記録映像に近い出来だ。ラダックやスピティで暮らす尼僧たちの生活が知りたい人が観ればいい映画である。