3.0
2017年5月13日からYouTubeで配信開始された「These Days」は、現代の母子関係を描いた14分ほどの短編映画である。
監督はフェビン・アント。本業はメカニカル・エンジニアで、映画を撮るのは本作が初である。キャストは、アーカーシュ・ティヤーギー、ウシャー・ヴィノード、サリール、アルン・ダッヴァー、アイシュワリヤー、ソーナークシーである。
主人公のアーディ(アーカーシュ・ティヤーギー)は会社に勤務する若者である。どうやら母親(ウシャー・ヴィノード)と二人暮らしで、場所はバンガロールに見える。最近、母親はコンピューターを始め、一生懸命ネットショッピングをしている。母親は分からないところをアーディに聞くが、彼は電話をしたりテレビを観ていたりして生返事をするだけだった。そんな彼が退屈な仕事を終えて帰宅すると、友人たちが集っており、サプライズの誕生日パーティーを開いてくれた。どうやら母親が企画してくれたようだ。母親がネットで買い物をしていたのもアーディのためのプレゼントだった。アーディは気分が軽くなり、母親の家事を手伝いながら、鼻歌を歌う。
一般的なインド映画で描かれる母と子の関係は、それはそれは強固なものだ。インド人の母親は基本的に子煩悩であり、男性はマザコンである。母親は常に子供のことを考え、時に自分を犠牲にまでする。一方、男性は常に母親の幸せを願い、母親のためなら何でもする。そんな関係性は現実のインド社会でも見出すことができる。
だが、みんながみんな、母親とそういう絵に描いたような関係を築いているわけではない。「These Days」の母親と息子の関係は、日本でもよくありそうなものだ。母親が一生懸命息子のアーディに話しかけるが、アーディの方は別のことをしており、母親の呼びかけにも生返事しかしない。
アーディは会社勤めだったが、仕事の方は順調とはいえなかった。プレゼンを作って上司に見せるが駄目出しをされ、完成したプレゼンは上司が顧客の前で利用する。完全に使いっ走りだった。いかにも楽しくない毎日を送っていそうだった。しかも、仕事帰りに友人と一杯飲もうとするが、断られる。
そんな沈んだアーディの気持ちを一時的にでもパッと明るくしたのも母親だった。アーディが家に帰ると、母親と彼の友人たちが出迎えてくれた。この日は彼の誕生日だったのである。
「These Days」は、14分の短い尺の中で、現代的な母と子の関係を凝縮してみせた佳作だ。