Main Naastik Hoon

2.5
Main Naastik Hoon
「Main Naastik Hoon」

 2015年8月29日公開の短編映画「Main Naastik Hoon(私は無神論者だ)」は、敬虔なイスラーム教徒の視点から宗教とは何かを問う小品である。監督はモイーン・カーン。キャストはラーガヴ・ラージなど。

 バシール(ラーガヴ・ラージ)は礼拝を欠かさない敬虔なイスラーム教徒であった。だが、ある日昼寝から目覚めると、町の様子がおかしかった。バシールが集会場に駆けつけると、普段は平和を訴えていた宗教指導者がヒンドゥー教徒の抹殺を呼びかけていた。聞くと、5人のイスラーム教徒が殺されたとのことだった。扇動されたイスラーム教徒の若者たちは、手当たり次第にヒンドゥー教徒を殺していく。その様子に絶望したバシールは髭をそり落とし、無神論者になる。

 イスラーム教徒男性は一般的に髭を伸ばす。これは預言者ムハンマドが男性に髭を生やすことを推奨したからである。イスラーム世界では、男性の髭面は信心深さと一体化している。「Main Naastik Hoon」の主人公バシールも髭を伸ばした敬虔なイスラーム教徒であった。

 しかし、バシールはイスラーム教徒であると同時に、他の宗教も尊重していた。道端で出会ったヒンドゥー教徒の子供にも優しく接していた。決して宗教で人を差別するようなことはしなかった。

 バシールの人生を一変させてしまったのがコミュナル暴動である。5人のイスラーム教徒がヒンドゥー教徒によって殺され、それに激昂したイスラーム教の宗教指導者は、少なくとも50人のヒンドゥー教徒を報復として殺すことを宣言する。イスラーム教徒の若者たちは刃物を持って町に繰り出し、手当たり次第にヒンドゥー教徒を殺していく。彼がついさっき道端で出会った少年も殺されてしまった。

 イスラーム教を平和の宗教と考えていたバシールはショックを受け、髭を剃り落とす。それは、イスラーム教を止めた印だった。同時に彼は少年の遺族にそっと金を渡す。

 もし宗教が暴力や殺人を肯定するならば、誰もそんな宗教には従わない。そんな強いメッセージが込められた短編映画だった。宗教対立はインドのアキレス腱のひとつで、宗教問題に警鐘を鳴らすこの種の映画はインドで多く作られている。その中で「Main Naastik Hoon」に特に光るものがあったわけではないが、メッセージは明確な作品だった。