2014年11月14日公開の「6-5=2」は、米映画「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(1999年)型のモキュメンタリー映画だ。ファウンド・フッテージ映画とも呼ばれる。行方不明の撮影者による映像をそのまま公開したという設定の映画だ。同名のカンナダ語映画(2013年)のリメイクである。
演出としてこの映画の監督は「故スィッダールト」とされているが、実際にはバラト・ジャインという人物である。それ以外に情報がなく無名の監督だ。キャストはニハーリカー・ラーイザーダー、プラシャーント・グプター、アシュルト・ジャイン、ガウラヴ・パースワーラー、ガウラヴ・コーターリー、ディシャー・カプールなどである。
2010年10月、スィッダールト(プラシャーント・グプター)、ラージャー(ガウラヴ・パースワーラー)、BJ(アシュルト・ジャイン)、ルッラー(ガウラヴ・コーターリー)、スハーナー(ディシャー・カプール)、プリヤー(ニハーリカー・ラーイザーダー)の6人は、南インドのジャングルをトレッキングしに訪れる。BJとスハーナーは付き合っており、プリヤーはスハーナーの友人だった。スィッダールトはムンバイーで撮影監督を目指しており、今回もカメラを持って来ていた。この6人の内、ラージャー以外の5人がジャングルで行方不明になり、BJとスハーナーは遺体で発見された。ラージャーは途中で5人とはぐれ、一人で帰って来たために生き残った。後にスィッダールトが撮影したビデオが見つかり、その映像を編集して公開されたのがこの映画である。
ジャングルに入った6人の若者が異変に直面し、徐々に殺されていく様子を、その内の一人であるスィッダールトが撮ったという設定のフッテージをつなぎ合わせた映像で追っていく。唯一の生存者であるラージャーのインタビュー映像が差し挟まれるものの、基本的に何が起こったのかは詳しく説明されておらず、それが逆に怖さを演出する。ただ、わざとらしい映像や演技も多くて、決して元祖「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を超える出来の映画とはいえない。
なぜ6人がこのような目に遭ったのかは分からない。ただ、ジャングルの中でスィッダールトが、頭蓋骨や人形が取り付けられた不気味な木を発見し、頭蓋骨を取り外して持ち去ってから目立って異変が起き始めたので、それが関係すると思われる。また、終盤ではスィッダールトやスハーナーを呼ぶ女性の声が聞こえてきたし、最後には一瞬だけ怒った老婆のような姿が見えた。これらのことから、どうやら「6-5=2」でも魔女が関係しているのではないかと推測される。
異変が起きるときは大体画面が白黒になるので身構えることができる。大きな効果音などで怖がらせるタイプのホラー映画ではなく、むしろ置きっぱなしにされたカメラが勝手に映している、ほとんど静止した映像の方に怖さがある。
インド人の若者たちがふざけ合う様子はとても自然で、演技ではなくアドリブで会話をしているのではないかとも思えた。中盤以降、彼らは異変を自覚し、道に迷ってジャングルの中を彷徨い始めるのだが、そのときに交わされるセリフもリアルだった。
題名は意味深である。もちろん「6-5」の答えは「1」になるわけだが、敢えて「2」とされている。「6」とはジャングルに入り込んだ6人の若者のことを指すのだろう。その内の5人が死ぬか行方不明になった。ということは残りは「1」のはずなのだが、「2」である。何かがひとつ多い。それは、ジャングルの中で彼らが出会った魔女のことだと捉えればいいのだろうか。
「6-5=2」は、一世を風靡した「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」を模したモキュメンタリー映画である。ほぼ「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」そのままであるし、一発勝負のアイデア商品でもあるので、原作を知っている人がわざわざインドで作られたリメイク作品を改めて観て楽しめる種類の映画ではない。唯一、心に残った点があるとしたら、インド人若者たちの会話が自然だったことくらいだ。それもマニアックな視点になるので、大多数の人にはオススメできる映画ではない。