Pizza

2.5
Pizza

 2014年7月18日公開の「Pizza」は、ピザのデリバリーボーイが主人公の、ヒンディー語ホラー映画である。同名のタミル語映画(2012年)のリメイクである。

 監督は「Wazir」(2016年)などで助監督を務めたアクシャイ・アッキネーニ。長編映画の監督は初となる。キャストは、アクシャイ・オーベローイ、パールヴァティー・オマナクッタン、アルノーダイ・スィン、ディーパーンニター・シャルマー、ラージェーシュ・シャルマー、Dサントーシュ、フサイン・ダラール、オームカル・ダース・マーニクプリー、ソーナーリー・サチュデーヴ、ディヤー・チャールワードなど。

 舞台はムンバイー。ピザ・デリバリーボーイのクナール(アクシャイ・オーベローイ)は、ホラー小説作家のニッキー(パールヴァティー・オマナクッタン)と結婚し住んでいた。二人とも経済的に不安定で、交通事故で死んだニッキーの両親の生命保険で手に入った金で暮らしていた。ニッキーは妊娠し、クナールは先行きに不安を感じる。

 クナールが勤務するピザ屋のオーナー、カプール(ラージェーシュ・シャルマー)は、最近悩みを抱えていた。やっと妻のプリヤー(ソーナーリー・サチュデーヴ)が妊娠したが、その妻が取り憑かれたようになり、自分をアンジャリと名乗るようになったのである。

 ある日、クナールがピザを届けに入った家が幽霊屋敷だった。クナールは、女性の幽霊(ディーパーンニター・シャルマー)、男性の幽霊(アルノーダイ・スィン)、そしてアンジャリと名乗る少女の幽霊(ディヤー・チャールワード)に追い回される。また、クナールを助けに来たニッキーも行方不明になる。クナールは命からがら逃げ出す。

 クナールはその話をカプールにする。そして警察に捜索願を出すが、ニッキーは見つからなかった。クナールは部下を連れて幽霊屋敷に入るが、そこでニッキーの幽霊を目にする。カプールはニッキーに金を渡し、しばらく休むように言う。

 ところがクナールが向かった先はニッキーのいる場所だった。実は彼らは、カプールがマフィアのアンナーに送ったダイヤモンドの原石を奪うために、幽霊屋敷をでっち上げたのだった。

 冒頭から安っぽいホラーシーンが続き、B級映画臭がプンプンする。ホラー映画にも一定の論理性が必要だが、この映画において幽霊が出るパターンや、なぜこのような怪奇現象が起きているのか、よく説明されないまま映画が進行するため、支離滅裂な印象を受ける。だが、最後まで観ると、その仕掛けが分かる仕組みになっていた。しかしながら、その種明かしをほとんど伏線なしに最後の最後まで引っ張ったために、単なるチープなホラー映画の印象が強く残ってしまっていた。脚本の妙で構成された映画ではあったが、「策士策に溺れる」という慣用句がピッタリだと感じた。

 意図的にホラーシーンを安っぽく演出しているのかもしれないが、どちらかといえば、監督の力量の限界によって安っぽさが出てしまったというのが実情だと感じた。単なる幽霊の乱発では観客を効果的に怖がらせることはできない。むしろ幽霊を出さない方が、次に何が起こるか分からないドキドキ感が出る。そういう機微が分かっていない映画だと感じた。

 監督の手腕も未熟だったが、俳優たちの演技も中途半端で、ホラー映画に迫真性を加えるのに失敗していた。特に主演のアクシャイ・オーベローイからはスター性を感じなかった。彼は俳優ヴィヴェーク・オーベローイの従兄弟にあたる。

 ただ、監督は相当な映画オタクだと思われる。クナールの家には、米国映画「黒猫」(1941年)や「姿なき殺人」(1967年)などのポスターに交じって、日本のアニメ映画「千と千尋の神隠し」(2001年)の日本語版ポスターが貼ってあった。いかにも映画好きが撮った映画という感じがする。それ故に、アイデア優先で基本が疎かになっていたのではなかろうか。

 劇中になぜかヒンディー語映画「Delhi Belly」(2011年)のタイトル曲「Bhaag D.K. Bose」が使われていたが、特に監督との関連性はなさそうだ。

 「Pizza」は、題名からはあまり想像できないが、ホラー映画である。同名のタミル語映画のヒンディー語リメイクだ。原作は低予算ながら口コミでヒットに化けたが、ヒンディー語版「Pizza」はフロップに終わった。原作は未見だが、おそらく原作の優れた脚本を活かせなかったのであろう。残念な映画である。