Sixteen

4.0
Sixteen

 2013年7月12日公開の「Sixteen」は、16歳の少女3人を主人公にした青春群像劇である。実はインド映画では意外にこの種の映画は少ない。

 監督は新人のラージ・プローヒト。キャストは、イザベル・レイト、ワーミカー・ガッビー、メヘク・マンワーニー、ハイフィル・マシュー、ローハン・メヘラー、スミト・バールドワージ、ヴァルン・ジャーンブ、ザーキル・フサイン、キース・サキーラー、プラブリーン・サンドゥーなど。一部を除き、無名の俳優ばかりである。

 舞台はデリー。アヌ(イザベル・レイト)、ニディ(メヘク・マンワーニー)、タニーシャー(ワーミカー・ガッビー)の3人は、高校に通う16歳の少女だった。アヌは裕福な家庭に育ち、容姿にも優れていて、モデルを目指していた。元恋人リシ(ヴァルン・ジャーンブ)に付きまとわれていたが、アヌの眼中にはなかった。ニディは処女で、恋人のカールティク(ローハン・メヘラー)とセックスをするかどうか悩んでいた。タニーシャーの両親は事故で亡くなっており、独身の叔母のディープティー(プラブリーン・サンドゥー)と一緒に住んでいた。ディープティーの家には、ヴィクラム(キース・サキーラー)という作家がペイングゲストとして住み始めた。アシュウィン(ハイフィル・マシュー)はタニーシャーのことが好きだったが、タニーシャーはサミール(スミト・バールドワージ)という年上の男性と付き合っていた。

 アシュウィンはタニーシャーに告白するが、タニーシャーは彼のことを友人としか考えていなかった。サミールとは既に別れていたが、ヴィクラムに恋するようになっていた。振られてしまったアシュウィンは自殺しようと考えるが思いとどまり帰宅するも、厳格な父親(ザーキル・フサイン)からPCの中にポルノ動画が保存されていたのを発見され叱責される。アシュウィンは父親を殺してしまい、逃亡する。そして、少年ギャングの仲間に入り、盗難などの軽犯罪を繰り返すようになるが、人を銃で殺すことができずに逮捕される。

 ニディがセックスを拒否したため、カールティクはニディと別れる。だが、ニディはカールティクを忘れられず、彼に身体を許す。しばらく後にニディは妊娠していることが分かり、堕胎するために入院する。両親にもばれてしまうが、父親は彼女の失敗を受け入れる。

 アヌは、ディスコに行った先で父親が別の女性と踊っているのを目撃する。それを母親に明かすと、実は両親はオープンマリッジの関係にあることを伝えられる。母親にも別の男性がいたのである。また、リシはアヌとの情事の際に録画したビデオをネットに公開する。アヌは学校から退学処分となり、自殺を考える。

 タニーシャーは、ディープティーがヴィクラムとの結婚を考えていることを知り、ショックを受ける。ヴィクラムもタニーシャーのことが好きになっており、ディープティーからプロポーズされると答えることができなくなる。ヴィクラムは去って行く。1年後、ヴィクラムはこの経験をもとに「Sixteen」という小説を書き、ブッカー賞にノミネートされる。

 2時間弱の映画だったが、アヌ、ニディ、タニーシャーの仲良し3人組は思春期にありがちな様々な問題に向き合っていく。映画の中で起こる出来事は本当に盛りだくさんで、かつインド独特のものというよりは日本を含む世界共通のものだ。家族関係や男女関係が中心であり、若年妊娠と中絶、厳格な父親との対立と殺害、年上の男性との恋愛、オープンマリッジ、自撮りポルノ動画の拡散などである。逆にいえば、インドらしさに乏しい映画にはなっているのだが、インドの高校生も日本と同じような価値観を持っていることが分かるのはこの映画の長所に数えていいだろう。

 3人の主人公の中でもっとも時間を割かれて描写されていたのは、タニーシャーの関係であった。タニーシャーは両親を映画館の火災事故で亡くしており、自分のことを疫病神だと考えていた。タニーシャーに言い寄っていたアシュウィンが父親を殺して逃亡するが、彼女は自分が彼を振って自暴自棄になった末の行動だと責任を感じてしまう。家にペイングゲストとして住み始めたヴィクラムと多くの時間を過ごすようになり、彼と恋仲になる。だが、独身の叔母がヴィクラムとの結婚を考えるようになり、彼女はジレンマに陥ってしまう。多数の主人公が登場する映画では、一人一人のエピソードが薄くなってしまいがちなのだが、「Sixteen」では特にタニーシャーのエピソードが深く掘り下げられた。

 しかしながら、一番印象に残ったのはアヌのエピソードだ。3人の中でもアヌが一番進んだ女性で、16歳にして多くの男性と浮名を流していた。両親も裕福な上に非常に寛容で、彼女はそんな両親を誇りに思っていた。だが、ある日アヌは、両親が形ばかりの夫婦であり、それぞれ外に別のパートナーを持っていることを知ってしまう。アヌ自身は自由恋愛を楽しんでいたものの、両親の自由恋愛は許容できなかった。この設定はとても斬新だった。

 舞台はデリーであり、デリーを象徴するような風景がいくつか出て来ていた。インド門、コンノート・プレイス、ジャーマー・マスジド、ラールキラーなどであるが、中でもバッリーマーラーンは知る人ぞ知るの観光地だ。著名なウルドゥー語詩人ミルザー・ガーリブの家があった地域であり、インド人の中では、バッリーマーラーンと聞けばガーリブが自動的に連想されてくる程まで両者はつながっている。事実、ヴィクラムはタニーシャーをミルザー・ガーリブの家に連れて行く。現在ではガーリブ博物館になっている。

 タニーシャーの両親が死んだ映画館火災事故は、1997年6月13日のウプハール・シネマ火災事故のことを指していると思われる。ウプハール・シネマは南デリーにあった映画館だが、映画上映中に火災が発生し、59名が死亡した。インドにおける最悪の映画館事故のひとつである。

 ザーキル・フサインを除けば、キャストはほとんど無名の俳優たちであり、特に16歳の主人公たちを演じた女優たちは新人または若手である。20代以上の俳優が高校生を演じるとどうしても嘘っぽさが滲み出てしまうのだが、リアルに10代の俳優たちが演じていたことでで、だいぶ信憑性のある映像になっていた。ただし、アヌを演じたイザベルだけは撮影時20代だったはずで、しかも彼女はブラジル人である。それでも、ませた女子高生として違和感はなかった。

 「Sixteen」は、題名通り、16歳の女子高生たちの視点から、青春時代に起こり得る様々な出来事を描いた青春群像ドラマである。スターの出演はないものの、しっかりと構成された物語で、高く評価したい。


Sixteen Full Hindi Movie (2013) | Izabelle Leite, Mehak Manwani, Wamiqa Gabbi, Highphill Mathew