1.0
「Tere Liye(君のために)」は2001年12月14日公開のヒンディー語映画である。本当は「Kabhi Khushi Kabhie Gham」(2001年)を観たかったのだが、チケットが手に入らなかったため、急遽観ることに決めた映画だった。面白そうな予感もした。なぜそう感じたかというと、この映画は「ZEE Network Presents」だったからだ。ZEEとはインドのテレビ放送局の名前で、ちょっと前に「Gadar: Ek Prem Katha」(2001年)を作って大ヒットを飛ばした会社である。だから面白そうだと思ってしまったのだが、蓋を開けてみれば何の救いどころもない超Z級のクソ映画だった。俳優はみんな新人でしかも個性の掴みようがない人ばかり、音楽も最低、ストーリーもおそまつ、場内からは何の笑い声も反応もなかった。監督はサンジャイ・ガードヴィーである。
一応理解できた範囲でストーリーを書き留めておくことにする。インドでは珍しくロックバンドをテーマにした映画だった。最初男3人女2人の若者たちがバンドを組んで音楽を作っていたのだが、なかなか世間から認められなかった。それぞれの親から仕事もせずにバンド活動をやっていることを咎められたり、コンペティションで自信作を披露しても賞がもらえなかったりして次第に意気消沈していく。そんなとき、女優の卵の女の子がバンドに加入し人間関係に変化が生まれる。いわゆるビバリーヒルズ青春白書的恋愛のすれ違いが起こったりしてメンバー間がうまくいかなくなる。今まで使っていたスタジオも閉鎖されてしまうのだが、最後に1回だけチャンスをもらってステージに出演し、そこで大成功を収めてバンドを続けることができるようになる、という話だった。
売れないバンドを主題にし、最後は素晴らしい曲を作って大成功を収める、という筋ならば、やはり最後に演奏される曲は今までの苦労を結集させた傑作にならなければならない。しかしその最後の曲はダサダサの曲だった。それなのに観客は無理矢理大興奮していたところがまたわざとらしくて、この映画の駄作ぶりを如実に表してしまっていた。もちろんそれ以前に演奏される曲にも突出したものはなかった。つまりバンドを主題にした映画なのに音楽監督が能無しだったため、この映画は最低の駄作となってしまったと言えよう。音楽だけでも取り得があればまだ許せたのだが・・・。何のために作られたのか全く理解しかねた映画だった。