Green Card Fever

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Green Card Fever
「Green Card Fever」

 2002年に公開されて好評を博したヒングリッシュ映画「American Desi」の第2弾とも言うべき映画が2004年3月5日から公開され始めた。「Green Card Fever」である。「American Desi」と同じスタッフが結集して、米国に住むインド人たちの現状を浮き彫りにした作品だ。PVRアヌパム4で鑑賞した。

 監督はバーラー・ラージャシェーカルーニー。キャストはヴィクラム・ダース、ディープ・カートダール、プールヴァー・ベーディー、カーイザード・コートワールなど。

 ムルリー(ヴィクラム・ダース)は米国に不法滞在するインド人だった。ムルリーはグリーンカード(永住権)を取得しようと弁護士オーム(ディープ・カートダール)に相談するのだが、相手にしてもらえない。そこでグリーンカードのブローカー、パルヴェーシュ(カーイザード・コートワール)にパスポートと書類を預けることにした。しかしパルヴェーシュは、不法滞在者にグリーンカードを提供すると言っておきながら強制労働をさせて金を儲けている男だった。ムルリーはいつまで経っても泥沼から抜け出せなかった。

 一方、ムルリーは在米インド人コミュニティーの会でバーラティー(プールヴァー・ベーディー)というNRI(在外インド人)二世の女性と出会う。アメリカで生まれ育ったバーラティーは最初、典型的インド人のムルリーを馬鹿にするが、自分が米国人から馬鹿にされたことにより、次第にムルリーと心を通わせるようになる。ムルリーはバーラティーには不法滞在者であることを黙っていた。しかしある日、ムルリーは入国管理局に不法滞在の罪で逮捕されてしまう。真実を知ったバーラティーは、ムルリーを「嘘つき」と呼んで突き放す。

 パルヴェーシュは中国系弁護士チャン(ロバート・リン)と共謀して、オームを貶めようと計画していた。法廷ではムルリーのパスポートの所在が問題になるが、ムルリーはパルヴェーシュらに言われた通り、オームのところにある、と答える。だが、根が正直だったムルリーは、パルヴェーシュの悪事を全て暴露する。おかげでムルリーは、パルヴェーシュとチャンの裁判が終わるまで米国で働く許可を得ることができ、バーラティーともよりを戻すことができた。

 「American Desi」では、インド文化を毛嫌いしていたNRI二世の主人公がインド人としての誇りを取り戻すまでの過程をコメディータッチで描写していたが、第2弾「Green Card Fever」では、米国の不法滞在インド人が直面する問題を描いており、より社会派映画に仕上がっていた。ただ、純粋に映画の楽しさから見ると、「American Desi」の方が上である。

 「Green Card Fever」の主人公は新人ヴィクラム・ダース演じる不法滞在インド人ムラリーであり、彼が米国で労働許可をもらうまでの過程がストーリーの本流となっている。しかし、NRI二世で、インド文化に反発した人生を送ってきたオームやバーラティーが、自分のオリジンに目覚める過程がサブストーリーとなっており、やはり前作と同じくNRIのインド郷愁主義が強い映画である。しかしその描写の仕方は雑で、不協和音となっているように感じる。

 前作で主人公を演じたディープ・カートダールは今回は助演男優として出演しており、不法滞在者や不法移民を徹底的に取り締まる弁護士オームを演じた。オームの祖父は、米国の法律よりもインド人コミュニティーの結束を重視し、息子の情け容赦ないやり方に反発していたのだが、オームは聞く耳を持たなかった。だが、祖父の突然の死により、オームはインドに目覚めることになる。一方、バーラティーを演じていたプールヴァー・ベーディーは前作でもヒロインを務めていた。バーラティーは両親に無理矢理見合いをさせられてうんざりしており、ムルリーにも冷たい態度を取っていた。しかし米国人ボーイフレンド、パトリックの誕生日パーティーで、米国人たちからインドを題材にからかわれたことをきっかけにムルリーと親交を深めるようになる。

 ヴィクラム・ダースは典型的なインド人役を演じていたが、多分本人は本当に生粋のインド人で素人俳優なのだろう。顔も平均的なインド人の顔、英語の発音も典型的なインド人の発音、演技をしているというよりは、本人の性格がそのまま投影された役だった。

 言語は95%以上が英語。ヒンディー語の含有率はヒングリッシュ映画の中では限りなく低い。だが、NRIや米国人のしゃべる英語は正統派の米国英語、インドからやって来たばかりのインド人のしゃべる英語は典型的なインド鈍りの英語と、2種類の英語が役柄によって使い分けられていた。

 米国に住むインド人や、米国移住を夢見るインド人には興味深い映画だったと思うが、部外者が見るとイマイチ感情移入しにくいところがある映画だった。米国では2003年8月に公開されたようで、あまりヒットしなかったようだ。インドでも「American Desi」ほどヒットはしないと思われる。