Made in Korea (Tamil)

2.5
Made in Korea
「Made in Korea」

 現在、インドの若者の間ではK-popが人気沸騰中である。既に筆者がインドに住んでいた頃(2001-13年)から韓流ファンのインド人は存在し、韓流イベントの様子を見に行ったこともある。元々ノースイースト地域では、文化的にメインランドのインドと距離があることもあって、ヒンディー語映画などよりも韓国の映画やドラマの方が人気だった。近年は、国際的な韓流人気にも影響され、その熱狂がだいぶ一般層にも浸透している印象である。そしてここに来て韓国ロケのインド映画が登場した。2026年3月12日からNetflixで配信開始された「Made in Korea」である。日本語字幕付きで配信されており、邦題は「マイ・ソウル・ダイアリー」になっている。

 監督はRAカールティク。まだキャリアの浅い映画監督である。韓国への渡航を夢見るインド人女性主人公を演じる主演は「They Call Him OG」(2025年)などに出演のプリヤンカー・モーハン。他に、リシカーント、ティルナヴッカラス、ジェンソン・ディワーカル、ジャヤーなどが出演している。また、多数の韓国人俳優が出演しているが、誰がどの程度有名なのかは分からない。その中でパク・ヘジンは「イカゲーム」(2021年)出演の女優であり、一定の知名度があると思われる。主人公と多少いい関係になる青年を演じるのはペク・シフンという男優だ。

 「Made in Korea」は現代の物語だが、その下敷きになっているのは、かつてインドから朝鮮半島に渡ったとされる姫の伝説である。韓国では許黄玉ホ・ファンオクと呼ばれ、墓も残っている。映画では彼女はセンバヴァラムと呼ばれていた。

 タミル・ナードゥ州イーロード県の田舎町コラッパルールで生まれ育ったシェンバガム(プリヤンカー・モーハン)は、幼い頃から韓流に親しみ、いつか韓国に行きたいと夢見ていた。シェンバガムの父親(ティルナヴァッカラス)は小さな食堂を営んでいた。

 成長したシェンバガムは、恋人のマニ(リシカーント)と結婚したいと思っていたが、マニは堅気の職に就いておらず、シェンバガムの父親からは見下されていた。とうとうシェンバガムはマニと駆け落ちし、チェンナイへ逃げる。そこでマニはシェンバガムの父親から預かった多額の現金を勝手に使い、シェンバガムをだまして韓国行きの飛行機に乗せた後、自らはムンバイーへ行って友人とビジネスを始める。シェンバガムは一人でソウルに降り立った。

 シェンバガムは韓国で仕事をするはずだったが、それは偽の会社で路頭に迷う。だが、YouTuberのホ・ジュンジェ(ペク・シフン)など、親切な韓国人に恵まれ、彼女は裕福な家庭でケアラーの仕事をすることになる。

 その家庭では、ヨンオク(ペク・シフン)という寝たきりの老婆がおり、シェンバガムの仕事は彼女の世話だった。ところがヨンオクは息子夫婦をだますために寝たきりの演技をしていただけだった。ヨンオクはシェンバガムを連れ出してソウルの街を満喫する。

 ヨンオクにはレストランを開くという夢があった。シェンバガムはその夢に協力し、ジュンジェと共に物件を見つけ出す。彼らはレストランを開店する。シェンバガムは父親のレシピを参考にして「インドキムチフライドライス」という新メニューを考案し好評を博す。SNSでバズったためにヨンオクの息子夫婦にも噂が届いてしまうが、何とかばれずに済んだ。

 ジュンジェたちはバンドを組んで活動を始める。それが大手レコード会社の目に留まり、彼らはチャンスを掴む。だが、MVを作るために資金が必要だった。シェンバガムは父親の金を返すために貯金をしていたが、それをジュンジェたちに渡す。ただ、その直前にヨンオクの息子夫婦にレストランを開いていたことなどがばれてしまう。それがきっかけでヨンオクは本当に倒れてしまい入院する。

 そのとき、シェンバガムの故郷では大規模な地滑りがあった。それを知ったシェンバガムはすぐに故郷に飛ぶ。両親や兄は無事で、彼らは再会を喜ぶ。何とか日常生活に戻ったが、今度はシェンバガムは韓国が恋しくなる。すると、なんと韓国で会った友人たちがコラッパルールを訪れてくれた。ただ、ヨンオクが亡くなったことも知らされる。

 父親に送り出され、シェンバガムは再び韓国に戻る。ヨンオクの息子夫婦は引っ越していて会えず、レストランももぬけの殻になっていた。彼女はヨンオクの遺志を継ぎ、レストランを再開させる。

 インド人が東アジアの国を訪れるというストーリーは少数ながら過去にもあった。もっとも有名なのは日本が舞台のロマンス映画「Love in Tokyo」(1966年)だ。この映画はヒットし、インド人の間で「さよなら」という日本の挨拶が広まるきっかけになった。少し前にはインド人シェフが中国に渡るカンフー・アクション映画「Chandni Chowk to China」(2009年/邦題:チャンドニー・チョウク・トゥ・チャイナ)があったし、さらに最近では相撲を主題にし、日本ロケも行われたタミル語映画「Sumo」(2025年)があった。韓国好きのインド人女性を主人公にし、実際に韓国ロケも実施された「Made in Korea」は、これらの系列に位置づけることができるだろう。

 また、少し異なるが、韓国ウェブドラマ「イカゲーム」のシーズン1にはパーキスターン人出稼ぎ労働者のキャラがいたことも記憶に新しい。当然、「イカゲーム」は韓国視点で南アジア人が描かれていたが、「Made in Korea」ではインド人視点で韓国に上陸したインド人女性の冒険が描かれる。

 ただ、残念ながら「Made in Korea」は、韓国という要素が物珍しいだけの盛り上がりに欠ける凡作であった。おそらくこの映画はインド市場のみならず、韓国を含めた国際的な市場を狙ったはずで、2時間未満という比較的短い尺の中でストーリーを無理にまとめようとしていた。そのために各キャラクター、人間関係、出来事などの描写に深みが足りず、何の引っかかりや溜めもなくストーリーが流れていく。恋人にだまされ、見知らぬ異国の地に放り出された主人公シェンバガムの孤独や恐怖などの感情はほとんど拾い出されていないし、彼女が韓国で出会った人々と絆を深めていく過程も駆け足すぎて感情移入が難しかった。唯一、シェンバガムとヨンオクの凸凹コンビ結成は楽しく演出されており、心が躍る時間帯だった。

 気になるのは、韓国人がこれを観てどう思うかである。インド人監督は韓国の魅力をよく捉えられていただろうか。日本人の視点から意見させてもらえば、表層的な韓国しか映し出されていなかったのではなかろうか。この種の映画によくあるカルチャーショックのようなものもあまりなく、シェンバガムは簡単に韓国の日常生活に溶け込んでしまっていて拍子抜けした。適応力がありすぎて、その振る舞いはまるでシティーガールであり、シェンバガムが片田舎出身とはとても思えなかった。

 おそらくこの映画の着想の原点は、K-popにタミル語を乗せたら面白いのではないか、ぐらいのものだったのではなかろうか。韓国でレストランを開くという方向に向かっていたはずだが、途中から強引にMVを作ることになり、タミル語混じりのK-pop的な曲「Everything Gonna Be Alright」が出来上がった。ただ、踊っているのは韓国人俳優たちだけで、プリヤンカー・モーハンは踊りに参加していなかった。これでは真の意味での韓印合作になっていないのではなかろうか。

 そういえば、シェンバガムがソウルの街で落ち込んでいたところ、韓国人ヴァイオリン奏者がおもむろに「Dil Se..」(1998年/邦題:ディル・セ 心から)の挿入歌「Ae Ajnabi」のメロディーを演奏し出すシーンがあった。この映画は第1次インド映画ブーム時に日本でも公開されたが、韓国でも有名なのだろうか。

 「Made in Korea」は、韓国主題、韓国ロケのインド映画としてユニークではあるが、それ以外にはほとんど何もない映画だ。だが、韓国でタミル語映画が撮影されたという事実や、その韓国関連の部分を楽しめる人には、十分ありの映画だ。