Jhootha Kahin Ka

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Jhootha Kahin Ka
「Jhootha Kahin Ka」

 2019年7月19日公開の「Jhootha Kahin Ka(どこぞの嘘つき)」は、2020年4月30日に死去した往年の俳優リシ・カプールの、最晩年の作品の一本である。ただし、2000年代のスタイルを思わせる古風なコメディー映画で、全く鳴かず飛ばずであった。

 監督はサミープ・カング。パンジャービー語映画界を主なフィールドとしている俳優・映画監督であり、過去に「Second Hand Husband」(2015年)というヒンディー語映画を撮っているが、有名な人物ではない。

 リシ・カプールはキャスト陣の筆頭でありメインキャラクターではあるが主役とはいいきれない。ただ、ジミー・シェールギルやサニー・スィンなども主役としては弱く、誰が主演なのかいまいちはっきりしない映画だ。他に、リレット・ドゥベー、オームカル・カプール、マノージ・ジョーシー、ニミシャー・メヘター、ラージェーシュ・シャルマー、ルチャー・ヴァイディヤー、アショーク・パータク、ラーケーシュ・ベーディー、ニールー・コーリーなどが出演している。また、サニー・リオーネがエンドクレジットに流れるアイテムソング「Funk Love」でアイテムガール出演している。

 パンジャーブ州出身のインド人青年ヴァルン・スィン(オームカル・カプール)はモーリシャスに留学し、そのまま当地に居着いていた。ヴァルンは友人の結婚式でリヤー・メヘター(ニミシャー・メヘター)と出会い、恋に落ちる。リヤーは両親ヴィノード(マノージ・ジョーシー)とルチ(リレット・ドゥベー)と共に住んでいたが兄弟がなく、婿入りしてくれる結婚相手を求めていた。ヴァルンには故郷パンジャーブ州にヨーグラージ(リシ・カプール)という父親がいたが、ルチといい仲になりたいために自分には家族がいないと嘘をつく。ヴィノードとルチもヴァルンを気に入り、彼をすぐに娘と結婚させてしまった。

 息子が勝手に結婚したことなど知らないヨーグラージは思い立って内緒でモーリシャスを訪れる。彼が滞在先に決めたのは、メヘター家の隣家で、しかもヴィノードが大家だった。ヴァルンは絶体絶命のピンチに陥るが、たまたまそばにいた親友カラン・パーンデーイ(サニー・スィン)を使ってごまかした。ヴィノードとルチは、ヨーグラージはカランの父親だと勘違いし、ヨーグラージはリヤーの夫はカランだと勘違いした。

 以来、ヴァルンは早朝にジョギングを口実にメヘター家を出て、そのまま隣家に入ってヨーグラージのところへ行き、夜になるとこっそりメヘター家に忍び込む毎日を過ごすようになる。ヨーグラージは不審に思うものの、ヨーグラージに同行してきた義理の弟コーケー(ラージェーシュ・シャルマー)は、ヨーグラージがルチを口説こうとしているのではないかと疑う。

 ところで、カランはソーナム(ルチャー・ヴァイディヤー)という恋人と結婚しようとしていた。カランの兄トミー(ジミー・シェールギル)は詐欺罪で刑務所に入っていたが、カランはソーナムに、兄は海外で仕事をしていると嘘をついていた。トミーは仮釈放されるが、カランはリヤーと結婚したと思い込んでいた。それがさらに混乱を招く。

 カランとソーナムの結婚式にたまたまヨーグラージが居合わせてしまい、トラブルが発生する。そこにヴァルンやトミーも駆けつけさらに大混乱になるが、最終的にはヴァルンはリヤーと、カランはソーナムと結婚ということに落ち着き一件落着となる。

 2000年代には、どこか風光明媚な海外のロケ地にキャストとスタッフが出掛け、そこで缶詰になって短期間に一本の映画を撮るのが流行った時期があった。チープなコメディー映画に仕上がることが多いが、一種の合宿みたいなもので、日頃忙しいスターたちにとってはいい気晴らしにもなり、人気だったようだ。海外にはロケ誘致のために制度を整えたり助成金を支給したりする国や都市もあって、財政面でも魅力的だったと聞く。「Jhootha Kahin Ka」もほぼ全編モーリシャスで撮影された映画で、その時代の名残が感じられる作品だった。

 ただ、スターパワーは弱い。リシ・カプールは1970年代のトップスターの一人だが、既に老齢であり、もはや彼に観客を動員する力はほとんど残されていない。ジミー・シェールギルもいい俳優だが、脇役俳優に定着してしまっていて、やはりスターとして映画の看板を背負う位置にはいない。かといって、サニー・スィンやオームカル・カプールも小物である。ならば脚本で勝負かと思うのだが、嘘が雪だるま式にトラブルを呼び込むという陳腐なプロットの、とことんチープなコメディー映画であった。ひとつふたつクスッと笑えるシーンはあったのだが、映画全体を救うほどのレベルでもなかった。サニー・リオーネのアイテムソングも安っぽく、蛇足に過ぎなかった。

 それでも、ラージェーシュ・シャルマーやマノージ・ジョーシーといった優れたコメディアン俳優が脇を固めており、彼らがコミカルなセリフの応酬をして笑いを生み出していたのは確かで、それは正当に評価しなければフェアではないだろう。

 「Jhootha Kahin Ka」は、リシ・カプールなどが出演するコメディー映画だが、その作りは2000年代のスタイルを踏襲した古風なもので、モーリシャスでロケが行われていたにもかかわらずとことんチープな作りだった。わざわざ観る必要はない映画である。