2002年10月1日から始まったインド国際映画祭。初日の昨日にはスィーリー・フォートにラター・マーンゲーシュカルが来たそうだ。今日からデリー各地の映画館で一般向けに各国、各言語の映画が上映され始める。午後6:30からリバティーでオリヤー語映画「Maguni Ra Shagada(マグニの牛車)」を観た。オリヤー語映画を観るのは初めてだったが、ベンガリー語映画っぽい雰囲気だろうな、と予想はしていた。そしてその予想通り、インドの素朴な田舎が舞台の悲しい物語だった。
オリッサ州のとある田舎の村。マグニは牛車タクシーのドライバーだった。毎日村と駅を行き来して、村人たちの足となっていた。マグニは誰からも愛される朗らかな性格で、カサラとカリアという二頭の牛を何よりも大事にしていた。 両親の決定に従い、マグニはクスムという美しい女性と結婚する。マグニは牛と同様、クスムに対しても限りない愛情を注いでいた。二人は仲睦まじい新婚生活を送っていた。 ところがある日、マグニの村にバスが運行し始める。もはやマグニの牛車に乗る者はいなくなった。今までマグニの牛車を愛用していた人々も、バスにしか乗らなくなってしまった。不幸は続く。同居していた父親と母親が相次いで亡くなり、遂にクスムも死んでしまう。 生活に困ったマグニは遂にカサラとカリアも売り払わざるを得なくなる。マグニの家にはただ牛のいない牛車だけが残った。失意の内にやがてマグニも死んでしまう。マグニの遺体を乗せた牛車は、最後の道をゆっくり進むのだった。
1時間半ほどの短い映画で、映画の内容よりもオリッサ州の田舎の様子がよく分かってよかった。女性は皆サーリーを着ているが、サーリーの下にブラウスなどを着ていなかった。結婚式の様子も見れたが、新郎新婦が変な冠を付けていたり、花嫁がずっと腰をかがめて歩いたりしており、デリー周辺の結婚式とは大分様子が違った。
オリヤー語は全く知らないが、時々ヒンディー語と同じ単語が出てきたりして、やはり基本的に同系統の言語であることが確認できた。ベンガリー語の分かる人に言わせれば、オリヤー語とベンガリー語はかなり似ているそうだ。
総合的に見て、映画祭に出品するのにちょうどいい作品だと思った。こんな映画ばっか見ていると退屈してしまうが、たまに見るのだったらいいだろう。近代化の波に押し流されて古き良きインドの田舎の村が変貌していく姿の断片を垣間見た気分だった。なぜかオートワーラーやリクシャーワーラーに同情してしまいそうになる。
客入りは10%ほど。全然観客がいなかった。これなら予約しなくても全く大丈夫だ。インド人にはあまり映画祭で映画を観る趣味はないみたいだ。ただ、一応明日の午後3:30から同じくリバティーで上映されるタミル語映画「Kannathil Muthamittal」(2002年)のチケットを予約したら、シリアルナンバーは023だった。さすがに日本でも有名なマニ・ラトナム監督の映画は比較的人気があるみたいだ。