The Last Mango Before the Monsoon

2.5
The Last Mango Before the Monsoon
「The Last Mango Before the Monsoon」

 「The Last Mango Before the Monsoon」は、2024年にカンヌ映画祭でグランプリを受賞したパーヤル・カパーリヤー監督が、まだインド映画TV学校(FTII)の学生だった頃の2015年に作った短編映画である。「Watermelon, Fish and Half Ghost」(2014年)、「Afternoon Clouds」(2015年)に続き3作目となる。オーバーハウゼン国際短編映画祭にて2015年5月2日にプレミア上映された。

 カパーリヤー監督の作品はシンプルである反面、詩的かつ難解であったが、この「The Last Mango Before the Monsoon」はもはや前衛芸術の域に達している。全くチンプンカンプンである。

 家の中でマンゴーを食べている老婆、タミル・ナードゥ州と思われる森林に象を監視するための暗視カメラを設置する二人、そして再び家に戻り、老婆が見た夢について耳を傾けるメイド。主にこれら3つの映像が順番に映し出され、それで映画は終わる。

 途中にヘタウマな絵が差し挟まれるのは、カパーリヤー監督が処女作以来行っているもので、彼女のシグネチャーになっている。だが、相変わらずその絵もストーリーの理解を手助けするものではない。

 意味不明な映像の連なりをつなげるヒントになりそうなのはモンスーン、つまり雨季だ。題名にもなっている。インドは雨季と乾季がはっきりと分かれたモンスーン気候にあり、雨季は、地域にも依るが、大体6月から9月くらいまでの期間である。インドにおいてマンゴーが旬を迎えるのはモンスーン直前の4月から6月くらいにかけてであり、インドがもっとも暑い酷暑期を迎えている時期と重なる。それを知ると、映画の題名「モンスーン前の最後のマンゴー」の意味も自ずと分かってくるだろう。

 また、モンスーン中に象は発情期を迎える。普段の象は大人しいが、発情期になると気性が荒くなり、農作物を荒らしたり人間を襲ったりもする。中盤に、二人の男性が森林に暗視カメラを設置するが、これは象対策のためだ。モンスーンを迎える準備のひとつだと解釈していいだろう。そして、象の姿を映した映像も流される。

 最後に、老婆がメイドに、見た夢の話をする。死んだ夫が森林の端に立って彼女を呼び、プーランポーリーというお菓子を食べたいと言うのである。森林という点で、中盤の映像と関連性があるように感じられるが、余程こじつけないとうまくつながらない。

 結局、何がいいたいのか分からないままエンドロールを迎えることになる。カパーリヤー監督自身も、これらの映像を撮っているときはどんな作品になるか完成形を想定していなかったのではないかと思う。そんな作品だ。

 「The Last Mango Before the Monsoon」は、カパーリヤー映画の中でももっとも難解で理解に苦しむ作品である。単なる映像のコラージュとして受け止めるのが正解なのかもしれない。


The Last Mango Before the Monsoon (Short 2015) by Payal Kapadia