Gutthi

4.0
Gutthi
「Gutthi」

 2014年3月5日からYouTubeで配信開始された短編映画「Gutthi(謎々)」は、スランプに陥ったミステリー作家が主人公のサイコスリラー映画である。

 監督はアビシェーク・チャタルジー。キャストはラトナ・シェーカル・レッディー、チョイーター・チャクラバルティー、ナレーン・ヤーダヴなどである。チャタルジー監督自身も一瞬だけカメオ出演している。

 ハイダラーバードのアパートに住むミステリー作家アーナンド・ラージャン(ラトナ・シェーカル・レッディー)はスランプに陥っていた。同じアパートで廃品回収屋をするカリール(ナレーン・ヤーダヴ)がゴミを漁って各家庭の個人情報を収集しているのを見て、何か面白いストーリーがあるのではないかと思い、彼を家に招き入れ、会話を始める。

 アーナンドは、かつて図書館で出会った女性(チョイーター・チャクラバルティー)の話をする。アーナンドはハイダラーバードのニザームから貴重な彫刻を贈られていたが、その女性に騙され奪われてしまった。だが、その彫刻だけが彼の家に届けられた。それを聞いたカリールは、その彫刻はかつて自分が地中から掘り起こしたものだと言う。だが、彫刻は運搬中に消えてしまったとも明かす。

 アーナンドは急に気分が悪くなる。実はカリールはアーナンドを騙した女性とグルで、彼から彫刻を盗み出そうとしていた。だが、女性はアーナンドに彫刻を返し、塩で作った彫刻を代わりにカリールに渡したのだった。雨に濡れた彫刻は途中で溶けてなくなってしまう。カリールは女性を殺し、バラバラにして薬品で溶かしてしまった。その後、カリールは彫刻を手に入れるためにアーナンドの周辺をうろついていたのだった。アーナンドは毒殺され、カリールは彫刻を持って逃げる。

 27分ほどの短い映画であるし、映像の質やロケーション、そして起用した俳優の演技などから低予算映画であることがありありと見て取れるのだが、脚本が優れており、非常に引き込まれる作品である。

 この映画を翻案した「Girl in Red」(2016年)を観てからこちらを鑑賞した。「Gutthi」の方が尺が長いものの、ストーリーはほとんど一緒である。「Girl in Red」の方がストーリーが凝縮され、映像が洗練されており、ロケーションにも金が掛かっている。俳優の演技も「Girl in Red」の方が優れている。「Girl in Red」に比べると、「Gutthi」は、監督が知り合いを集めて近所で撮ったような作品で、本来ならば比較にならない。それでも、「Gutthi」の方により引き込まれるものがあったのは、オリジナルだけが持つオーラがあったからであろうか。

 ただ、「Girl in Red」に比べて「Gutthi」が弱かったのは、付箋による会話が最大限に活かされていなかったことだ。付箋による会話は、いわゆる「逆から読むと意味が変わる文章」になっている。有名なのは西部・そごうのコーポレート・メッセージだ。

大逆転は、起こりうる。
わたしは、その言葉を信じない。
どうせ奇跡なんて起こらない。
それでも人々は無責任に言うだろう。
小さな者でも大きな相手に立ち向かえ。
誰とも違う発想や工夫を駆使して闘え。
今こそ自分を貫くときだ。
しかし、そんな考え方は馬鹿げている。
勝ち目のない勝負はあきらめるのが賢明だ。
わたしはただ、為す術もなく押し込まれる。
土俵際、もはや絶体絶命。

 この文章は下から読むと意味が正反対になる。「Gutthi」では以下のようなメッセージが付箋によって交わされた。()が付箋での会話で、「」が声を出しての会話だ。「Girl in Red」でも大体同じ内容である。

女:(Interested)
男:(Not)
女:(If You Are)
男:(Forget It)
男:「Why are you after me?」
女:(One Big Secret)
男:「What do you want?」
女:男の胸を指を差すジェスチャー
男:「My Shirt?」
女:(Beneath It)
男:(What Lies)
女:(We Can Meet)
男:(Where)

 この付箋部分をカリールが逆から読み、彫刻の在処だと考えたのである。ざっくりと訳すと、「大きな秘密がこの住所の下に隠されている。もし興味がなければ忘れろ」になる。ただ、もしカリールと女性が最初からグルだったとしたら、せっかく工夫したこの付箋でのやり取りが活かされない。「Girl in Red」の方ではその辺りが曖昧にされ、付箋の工夫が活かされていたが、「Gutthi」では明らかにカリールと女性に面識があったとされており、混乱が見られた。ただ、この点を差し引いても、「Gutthi」の方が魅力ある映画である。

 「Gutthi」は、低予算の短編映画ながら、脚本の秀逸さひとつに立脚して作られた作品だ。この映画がより洗練されてリメイクされた「Girl in Red」と見比べるのも面白いだろう。


https://www.youtube.com/watch?v=IuefGFDAChQ