2015年4月10日公開の「Barefoot to Goa」は、病気の祖母に会うため、2人の子供が自分たちだけでムンバイーからゴアへ向かうというロードムービーである。クラウドファンディングによって資金調達をし作られた映画だ。
監督は新人のプラヴィーン・モールチャレー。キャストは、ファラク・ジャーファル、サーラー・ナハル、プラカル・モールチャレー、クルディープ・ドゥベー、プールヴァー・パラーグなどである。
ゴアに住む祖母(ファラク・ジャーファル)はムンバイーに住む息子(クルディープ・ドゥベー)に頻繁に手紙を送り、たまにはゴアに帰省するように伝えていたが、返事は返ってこなかった。彼の妻(プールヴァー・パラーグ)が全て止めていたのである。二人の娘ディヤー(サーラー・ナハル)は祖母に会いたがっていた。ディヤーは母親のクローゼットから、祖母が父親に宛てて送っていた手紙を見つける。それを読むと、祖母は肺ガンを患っていることが分かった。ディヤーは兄のプラカル(プラカル・モールチャレー)と共にある日、祖母を訪ねてゴアを目指す。 ディヤーとプラカルはまず列車に乗って南へ向かい、そこからバス、牛車、トラック、バイクなどを乗り継いでゴアを目指す。途中でお金をなくしたりもしたが、親切な人々に出会ったおかげで何とかゴアに辿り着く。祖母の家を訪ねてみたが、留守だった。二人は祖母の帰りを待つ。一方、祖母は列車でムンバイーへ向かおうとしていた。だが、列車は遅延していてなかなか来なかった。家にラッドゥー(お菓子)を忘れたのを思い出し、祖母は自宅へ向かう。だが、その途中で倒れてしまう。
小学生くらいの兄妹が2人でムンバイーからゴアを目指すという物語だ。二人がそのような冒険をせざるをえなくなったのには、嫁姑の確執に原因がある。ムンバイーに住む母親はゴアに住む祖母を嫌っており、祖母から送られてくるラッドゥー(お菓子)はゴミ箱に捨て、手紙は開けずにクローゼットにしまっていた。言葉がしゃべれない祖母は、肺ガンに罹っていると手紙で息子に伝えようとしていたが、息子には届いていなかった。しかし、偶然その手紙を子供たちが見つけ、祖母を心配して、両親には内緒でゴアを目指したのである。
ロードムービーなので、ムンバイーからゴアまですんなり行けてしまっては全く面白くない。道中ではもちろん、主人公のディヤーとプラカルの身に様々なことが起こる。ただ、意外に会う人会う人皆親切で、これといって深刻なトラブルは起きない。プラカルが、ヒッチハイクしたテンポ(軽トラック)にギターを入れたソフトケースを置いて下りてしまい、そこに現金や祖母の住所が書かれた手紙も入っていたため、二人は路頭に迷ってしまう、というのが最大の危機らしい危機だ。ただ、やはり親切な人にしか出会わないので、一文無しになっても彼らは進み続けることができた。
クラウドファンディングで作られた映画ということなので、もしかしたらムンバイーからゴアへ向かう途中に出会った人々の中には、寄付者も含まれているのかもしれない。寄付の返礼が映画出演というわけだ。ほとんど脈絡なくいろいろな乗り物を乗り継いでいき、いろいろな人に助けられて移動していくので、違和感があったが、クラウドファンディングの返礼と考えると合点がいく。ただ、編集が雑で、シーンとシーンが突然切り替わるようなところも散見されたため、もしかしたらこれが監督の実力なのかもしれない。
「裸足でゴアへ」という意味の題名からは、主人公が裸足で歩きながらゴアへ向かうような印象を受けるが、実際に彼らが歩いた距離は短く、しかも裸足になってしまったのはかなりゴアに近付いてからだ。何を思ったのか途中で寺院に参拝し、そこで靴を盗まれてしまったのである。ただ、裸足になっても、それが何か重要な伏線になっているわけではなかった。この映画は終始そのようなフワフワした展開だ。
できることなら、最後に祖母と孫たちを引き合わせてあげて欲しかった。ここまで苦労して旅をしてきたのに、祖母が倒れて孫に会えずじまいというのはあまりに残酷すぎるエンディングだった。
祖母を演じたファラク・ジャーファルだけは非常に知名度のある俳優である。プラカルを演じたプラカル・モールチャレーは、名字から察するに、プラカル・モールチャレー監督の息子であろう。
「Barefoot to Goa」は、クラウドファンディングで作られた、2人の子供を主人公にしたロードムービーである。良作の雰囲気はあるが、思い付きで撮った映像をつなげたような、捉えどころのない作品であり、賛否が分かれるというよりも、否の方が多そうだ。最後に感動が待っているわけでもない。無理して観なくてもいい映画である。