2016年5月6日公開の「One Night Stand」は、元AV女優のサニー・リオーネ主演のエロティックな不倫サスペンス映画である。そう書けば、もう大体内容の予想が付いてしまうほど、コテコテの映画だ。
監督はジャスミン・デスーザ。ミスコン出身の元モデルで、多くのTVCMなどに出演したことがある。監督をするのは今回が初となる。ミスコン出身の女性監督が元AV女優を起用して映画を撮るところに面白さがある。
主演のサニー・リオーネ以外には、タヌジ・ヴィールワーニー、ナイラー・バナルジー、カーリド・スィッディーキー、カンワルジート・スィン、ニナド・カーマト、シシル・シャルマーなどが出演している。
イベント会社に勤めるエリート社員のウルヴィル(タヌジ・ヴィールワーニー)は、仕事で訪れたタイのプーケットで、セリーナ(サニー・リオーネ)という美女と出会い、一夜限りの関係を結ぶ。プネーに戻ったウルヴィルは、何事もなかったかのように妻スィムラン(ナイラー・バナルジー)の出迎えを受ける。 セリーナとの一夜が忘れられないウルヴィルは、プネーの街角でセリーナを見掛けたことから、その想いをさらに募らせる。そして、仕事の関係で、セリーナは大富豪アーディラージ・カプール(カーリド・スィッディーキー)の妻アンバルであることが分かる。ウルヴィルも既婚であることを黙ってセリーナと情事を楽しんでいたのだが、セリーナに騙されていたことが分かり、怒り狂う。そして、セリーナをストーカーすることになる。 四六時中セリーナのことを考えるようになったことで、スィムランとの関係は悪化し、仕事にも支障が出て来る。とうとうスィムランにもセリーナとの不倫がばれてしまい、家から追い出されてしまう。セリーナも、たとえ夫から見放されようともウルヴィルの元には駆け込まないと言われてしまう。ウルヴィルは仕事を辞し、去って行く。
よくある不倫モノのサスペンス映画であり、ほとんど目新しいものはなかった。タイのリゾート地であるプーケットで出会い、一夜限りの関係を結んだインド人の男女が、実は二人とも既婚であったことが分かるのはいい。だが、二人とも偶然プネー在住だったというところから何だか偶然が過ぎるように思えてくるし、さらに仕事の関係で二人が顔を合わせることになるという展開は、都合が良すぎるといわざるをえない。サニー・リオーネのセクシーな映像を盛り込むために、ストーリーを取って付けたような映画であった。
男女どちらの視点から物語を語るかには選択肢があったといえるだろう。「One Night Stand」の語り手はウルヴィルであり、ストーカーになるのもウルヴィルであった。一方、サニー・リオーネ演じるセリーナ/アンバルは、ストーカーされる側になり、彼女の視点で描かれた映画でもなかった。よって、実はウルヴィルを演じたタヌジ・ヴィールワーニーの方がより主演である。
どちらかといえば、ウルヴィルの視点から語るならば、セリーナからストーカーされるようになった方がスリリングな展開になったと思うのだが、サニー・リオーネにそこまでの演技を求めてなかったということかもしれない。
ウルヴィルの妻を演じたナイラー・バナルジーは収穫だった。ムンバイー出身の女優ながら、南インド映画に多数の出演作がある。演技も悪くなかったし、その美貌には十分にヒンディー語映画界の第一線で活躍するに値するものがある。今後の活躍に期待したい。
「One Night Stand」は、元AV女優で、セックスシンボルとして君臨するサニー・リオーネのセクシーなシーンを唯一のアピールポイントとして作られた不倫モノ映画である。ストーリーに目新しさなどを求めてはならず、サニーにしか期待をしないのが正しい見方だ。