「Footfairy」は、コロナ禍で映画館が閉鎖されていた2020年10月24日にTVで放映されたヒンディー語のサスペンス映画である。2022年7月24日からNetflixで配信開始された。
監督はカニシュク・ヴァルマー。キャストは、グルシャン・デーヴァイヤー、サーガリカー・ガートゲー、クナール・ロイ・カプール、アーシーシュ・パトーデー、タニア・ラージャーワトなどである。
ムンバイーでは、若い女性の連続殺人が発生していた。深夜、電車から下りて帰宅途中の女性が窒息死させられ、両足を切り取られた遺体がスーツケースに入れられて線路脇に放置されるという手口であった。中央捜査局(CBI)の敏腕捜査官ヴィヴァーン・デーシュムク(グルシャン・デーヴァイヤー)が事件の担当になる。連続殺人犯は自らを「フットフェアリー」と名乗り始める。 ヴィヴァーンは、レストラン経営者のジョシュア・マシューズ(クナール・ロイ・カプール)を容疑者だと決め付ける。ジョシュアは足フェチで悪名高く、事件との関連性もありそうだった。だが、決定的な証拠が見つからなかった。ヴィヴァーンは囮捜査を行うが、逆に恋人のデーヴィカー(サーガリカー・ガートゲー)の写真が送られてくる。デーヴィカーは無事だったが、ヴィヴァーンはますますジョシュアを疑う。ヴィヴァーンと同じアパートに住んでいたリチャー(タニア・ラージャーワト)がフットフェアリーに殺されたことでヴィヴァーンの怒りは爆発し、ジョシュアに殴りかかる。だが、ジョシュアが犯人だとの証拠は依然としてなく、彼は名誉毀損で訴えられ、辞職せざるを得なくなる。 7年後、デーヴィカーと結婚しバンガロールに住んでいたヴィヴァーンはかつての上司の葬式に出席するためにムンバイーに戻ってくる。リチャーの遺体が入ったスーツケースが置かれていた場所を再訪するが、そこで少し前に同じようにその場所を訪れていた男がいたことが分かる。
連続殺人事件が発生し、犯人を追う敏腕捜査官の主人公が登場するとなれば、その主人公が見事な推理で犯人を特定して捕まえるというラストを思い浮かべる。観客は、全ての謎が明らかになる結末を楽しみに物語を鑑賞し、次々に解かれていく謎に爽快感を覚え、そしてどんでん返しに驚く。古今東西、サスペンス映画は数多くあるが、楽しみ方はそう変わっていない。
だが、「Footfairy」は前衛的すぎる結末を用意していた。それは反則技もしくは禁じ手のようなものだ。なんと犯人が最後まで分からないのである。犯人が分からないサスペンス映画ほどストレスの溜まるものはない。
個人的には、真犯人はデーヴィカーだと予想していた。ジョシュアが怪しいとヴィヴァーンに告げたのもデーヴィカーだったし、ヴィヴァーンのプライベートに関する情報に精通していた点でもデーヴィカーが真犯人であることと矛盾しなかった。だが、7年後のエピローグシーンで、リチャーのスーツケース発見場所にいた子供が、ヴィヴァーンの前にそこに立っていた「男」について言及する。もし真犯人が男性だとすると、デーヴィカーが真犯人だという線は消え去る。
かといって、ジョシュアが真犯人だと断言することも難しい。そうなると、登場人物の中に真犯人を見出すことが非常に難しくなる。
犯人の動機もいまいち不明だ。もちろん当初は足フェチをこじらせて殺人事件を起こすようになったのだろうが、途中からヴィヴァーンをターゲットにし出し、パターンが変化する。そして、ジョシュアを犯人扱いし、暴行まで加えた失態の責任を取ってヴィヴァーンがCBIを辞職すると、フットフェアリーによる殺人事件が起きなくなる。そうなると、連続殺人事件の動機はフェティシズムではなかったということになる。つまり、ストーリーに論理性が欠けている。脚本がまずかったといわざるをえない。
グルシャン・デーヴァイヤー、サーガリカー・ガートゲー、クナール・ロイ・カプールなど、ヒンディー語映画界である程度知名度のある俳優たちが出演し、堅実な演技を見せていたが、派手さはなかった。むしろ、脚本の混乱により、彼らの演技が台無しになっていた。
「Footfairy」は、真犯人が不明のまま終わる反則技のサスペンス映画であり、鑑賞後にストレスが溜まる残念な作品だ。結末までの展開も混乱しており、脚本からつまずいている。スターパワーもない。無理して観なくてもいい作品である。