ヒンディー語映画を観ていると、特に結婚式のシーンなどで、女性たちの手足に美しい装飾紋様が施されているのを目にする。これは「मेहंदी」という。
北アフリカから南アジアの乾燥地帯にヘンナというミソハギ科の常緑樹が自生している。日本語では指甲花または爪紅木というようだ。
ヘンナの葉には、ローソン(Lawsone)またはヘンノタンニン酸(Hennotannic Acid)という化学物質が含まれている。ローソンはタンパク質に絡みつく特性を持っており、インドではそれを美容に活用する習慣がある。
このヘンナの葉をすりつぶして乾燥させ、粉にしたものを水で練ってペースト状する。それを肌などに付けて乾燥させ、しばらく置いておく。ペーストを剥がすと、その部分が赤く変色している。この要領で、白髪を染めたり、爪を着色したり、肌に模様を描いたりするのである。
メヘンディーはこのヘンナのペーストを使って描かれた紋様である。ヘンナによる着色は1~2週間ほどで自然に消える。時々「ヘナタトゥー」などとも称されるが、タトゥー(入れ墨)とは異なる。
現在、インドではメヘンディーはファッションの一部として女性たちを彩っているが、元々は吉祥や豊穣の象徴であり、魔除けの効果もあると信じられていた。もっとも豪華なメヘンディーは、結婚時の花嫁に施される。結婚式の儀式の中に「メヘンディー」と呼ばれるものがあり、そこで花嫁を中心に参列する女性たちがメヘンディーを施す。ただ、結婚式以外であっても、祭事などにインドの女性たちは好んでメヘンディーの装飾を付ける。市場に「メヘンディー・コーン」などと呼ばれるヘンナ・ペーストの既製品が売られているので、器用な人なら自分で模様を描くこともできるが、街角に「メヘンディーワーラー」と呼ばれるメヘンディー職人が出没するので、そこで頼むのが一般的だ。
ヒンディー語映画でメヘンディーが登場するのは、やはり結婚式のシーンが多い。ヘンナのペーストを付けたら、しばらくそのまま乾燥させておかなければならないため、両手が使えなくなる。両手にヘンナを付けて手持ち無沙汰にしている花嫁の姿は可愛らしいものだ。近年では、「Queen」(2014年/邦題:クイーン 旅立つわたしのハネムーン)の「London Thumakda」が人気のメヘンディー・ソングである。