今日はPVRアヌパム4で、2005年9月16日公開の新作ヒンディー語映画「James」を観た。プロデューサーはラーム・ゴーパール・ヴァルマー、監督はローヒト・ジュグラージ(新人)。キャストは、モーヒト・アフラーワト(新人)、ニシャー・コーターリー(新人)、ザーキル・フサイン、シェーレーヴィール・ヴァキール、モーハン・アーガーシェー、スネーハル・ダービー、ラージパール・ヤーダヴなど。
ゴアからムンバイーにやって来たジェームス(ローヒト・ジュグラージ)は、不正を何よりも憎む正義漢であり、心は優しいが最強の拳を持っていた。ジェームスは親友のバブルー(スネーハル・ダービー)の家に住み、バーの警備員の仕事を始める。ジェームスは、モデルのニシャー(ニシャー・コーターリー)と出会い、何となく心を惹かれる。 ところが、ニシャーに惚れたのはジェームスだけではなかった。ニシャーは、ムンバイーの裏社会を牛耳るラーデー(シェーレーヴィール・ヴァキール)に言い寄られていた。ラーデーの兄シャーンティ(ザーキル・フサイン)は政治家で、表社会からムンバイーを牛耳っていた。この兄弟に逆らおうとする者はムンバイーにはいなかったが、ムンバイーにやって来たばかりのジェームスにはそれが通用しなかった。ジェームスはある晩、ラーデーを叩いて気絶させ、それ以来マフィアに命を狙われるようになる。ラーデーの襲撃を受けるたびに最強の拳法で一網打尽にするジェームスであったが、バブルーがマフィアに殺され、ニシャーの命に危険が迫ったことにより、ムンバイーから逃げ出すことを決める。 ジェームスはニシャーを連れてムンバイーから逃げ出すが、警察とグルになったラーデーたちから逃れることはできなかった。遂にジェームスとニシャーは捕まってしまう。ニシャーは隙を見て逃げ出すが、逃げ切れなくなると崖から飛び降りて自殺してしまう。ジェームスも逃亡に成功するが、今度はジェームスがラーデーたちに復讐する番だった。ジェームスの命を狙っていたラーデーも、ジェームスを待ち伏せする。 マフィアのアジトに乗り込んだジェームスは、豪雨の中、日本刀を振り回すラーデーと死闘を繰り広げる。その戦いの中で、ラーデーの刀が誤ってシャーンティの首を斬ってしまう。ジェームスはラーデーを打ちのめした後、刀で突き刺して止めを刺す。
「ラーム・ゴーパール・ヴァルマー」という名前は、今やヒンディー語映画界の安心マークと言っていい。ラーム・ゴーパール・ヴァルマーがプロデュースまたは監督した映画は、チケット代を出すだけの価値が十分ある映画であることがほとんどである。この「James」もラーム・ゴーパール・ヴァルマーがプロデュースしており、いつもの通り何か特別なものを期待して映画館に足を運んだ。しかし、残念ながら今作に限っては、その期待を裏切る「普通のインド映画」であった。
ストーリーは単純である――やたらケンカの強い正義漢が主人公。モデルの女の子と運命的な出会い。マフィアが彼の命を付け狙う。女の子が死亡。復讐の鬼と化した主人公が、マフィアを殲滅させる――この筋だけ読めば、映画を観なくても映画を理解できるだろう。つまりただのアクション映画である。
この映画の見所は、ジェームスを演じた新人モーヒト・アフラーワトと、「Sarkar」(2005年)でデビューした悪役俳優、ザーキル・フサインの演技だろう。モーヒトは、寄り目気味のかわいい顔をした男だが、身体はシャープに鍛えられており、ジェームス役にはピッタリだった。おそらく「インドのブルース・リー」を意識してスカウトされたのではないかと思う。血気盛んな弟ラーデーに手を焼く、冷静な悪徳政治家シャーンティを演じたザーキルは、「Sarkar」に引き続きインテリマフィアの演技に磨きをかけている。ラーデーを演じたシェーレーヴィール・ヴァキールもよかった。
だが、ヒロインを演じたニシャー・コーターリーはまるで将来性がない。コルカタ生まれのジャイナ教徒らしいが、ヒンディー語のしゃべり方が変だ。彼女がセリフをしゃべるたびに観客からクスクスと笑いが漏れていた。序盤のミュージカルシーンでミニスカートを履いてパンチラを披露したり、際どい入浴シーンに挑戦したりしていたが、セックスアピールもない。ラーム・ゴーパール・ヴァルマーが選ぶ俳優にはキラリと光るものがある人が多いが、ニシャー・コーターリーだけは今のところ理解不能である。
あまり息抜き的コメディーシーンが似合う雰囲気の映画ではなかったのだが、ラージパール・ヤーダヴがスクリーンに登場するコメディーシーンは映画のハイライトだったかもしれない。大富豪の別荘を預かる警備員のトミー役なのだが、ご主人様の服やサングラスを身に付けて「お金持ちごっこ」をして遊んでいたりする。おかしな訛りのある言語をしゃべっていたが、あれはマラーティー語訛りなのだろうか?
「James」はラーム・ゴーパール・ヴァルマーの名前が入っているものの、ほとんど観る価値のない映画だと結論づけざるをえない。